[詳細版]ピンボール各部名称及びパーツ等の情報 (随時更新)

こではピンボール機本体も含めて各部の名称及び部品等の関連情報を掲載します。

名称や用語については各メーカーや時代によって異なるものもありますので、多くは一般に浸透していると思われるものを用いたつもりです。基本的に1970年代半ば頃から2020年のある時点までの範囲にある機種を念頭に置きましたが、1930年代のピンボール草創期からの歴史的な事柄にも触れて変遷を示しているところもあります。経験に基く記憶を補完するためや全く経験のない物事に関しては各種資料を参考にしました(特にInternet Pinball Databaseを頼りにしました)。

具体的ではない時代を大まかに示すために「古い」「近代」「近年」といった表現を随所に用いていますが、2020年の時点で見てそれぞれを「古い=1970年代以前」「近代=1980年代以降」「近年=2010年代以降」くらいのつもりで読み取って頂きたいと思います(あくまでおおよその目安です)。

取り上げた情報は「諸説あるものの中の1つ」である場合もあります。考察に関しては文章の引用なしで書き起こしています。曖昧な表現や不備があるかも知れませんが、ご容赦願います。

  • (1)バックグラス / backglass

    (6)バックボックスの手前面にあり、機種名や絵柄のあるガラス板。

    古い機種では絵柄などがガラス裏面に直接印刷されている。近代では絵柄の印刷されたトランスライト(translite)と呼ぶシートを透明ガラスが覆っていることが多い。

    ガラスの厚さは近代の一例では1/16インチ(約1.6mm)。

    バックグラスは遠くから見ても機種の識別に役立ち、しかも絵柄の見た目の良し悪しが一般客の誘引に差を生むので看板として重要なものである。1970年代頃までの機種では時代を色濃く反映するデザインが多く、ポップアート絵画のような趣さえある。仕掛けとしても鏡面加工をしたり多層構造で奥行きを持たせるなど様々な工夫がされた。ところが近年多くなっている版権ものの機種では絵柄や構図にピンボール的な独自性は発揮されていない感がある。

    次項(2)ディスプレイで触れるが、初期のバックグラスにおいてはいくつもの数字が並べられることでスコアを示していた。裏側に仕込んだ電球の点灯でスコアを表わすこの方法はバルブスコアリング(bulb=電球 scoring)と呼ばれる。それらの数字はバックグラスの面積の多くを占めてしまうのだが、そこそこ自由に配置することが出来るために絵柄を形作る要素として取り込まれた。それが洗練された結果、絵と数字を融合させた特殊なアートに昇華している。ところが1950年代にドラム式リールによってスコアがどの機種でもほぼ共通の定位置(自由が利かない)に表示されるようになると、スコア部分に合わせた絵柄にしなければならなくなったために絵柄の全体構成は大きく変わる。この様式はセグメントディスプレイになってからも続くが、一方で "GAME OVER" や "TILT" (揺らし過ぎに対する罰則)のようなプレイ状況表示が徐々にバックグラスでの電球からセグメントディスプレイに移って行く。そして1980年代半ばにはスコア部分が配置的にも絵柄にほとんど絡まないようになって来る。更に1990年前後にはスコアを表示する(2)ディスプレイ全体がバックグラスの範囲内から抜け出し、ついにバックグラスはプレイ状況に関する情報表示を含まない単なる絵としての存在になる傾向が明確になる。

    1950年代半ば頃からの機種にはバックグラスの裏にインサートボード(insert board)という木板(全面が白く塗装されていることが多い)がある。次項(2)ディスプレイで説明するドラム式リールやセグメントディスプレイのようなスコア表示機器は、このボードに取り付けられてバックグラスの裏側すれすれに位置する。またインサートボードには多数の電球が配置され、バックグラスの絵柄や文字や数字を生き生きと輝かせている。この時代の機種を見ると、バックグラスに応じた電球配置には職人芸的な技術があったことを想像させられる。また連続的な動きを伴う絵柄などを電球で次々に照らし示す手法が用いられることがあり、バックグラスライトアニメーション(backglass light animation)と呼ばれる。なおこれは(6)バックボックスの項で触れるメカニカルバックボックスアニメーションとは別である。

    近代になるとそれまで培われた電球の配置による様々な表現は徐々になくなって行き、バックグラスの存在感は薄れたかも知れない。インサートボードのなくなった近年の機種では光源の配置も恐ろしく単純化されており、蛍光灯が1本横たわるだけだったりLEDを中央に集中させるなどの味気ないものになっている。バックグラスライトアニメーションなどは遠い昔の芸術である。ちなみにソリッドステート機(集積回路や基板による制御式)では不思議ではないことだが、エレメカ機(電気機械式)において装飾用電球表示が点いたり消えたりする仕掛けがある。これはバイメタル(bimetallic strip)を用いた電球が自身の発する熱によって温まるとオフになり、冷えると再びオンになることを繰り返しているのである。単体での周期はほぼ固有一定だが、しかし個々のバイメタル電球の持つ周期は他とは異なっていることが多い。これは装飾照明として、例えばクリスマスツリー用に適していた。古いピンボール機を見付けたら、バックグラスにある1つ1つの電球の点滅周期を味わってみるのも一興であろう。

    なおバックグラスの絵にはそれぞれの絵描きの個性が色濃く出るもので、ゲーム機の内容とはまた別の観点で鑑賞することも出来る。古い時代のものも近代のものも、ピンボール機を並べて観られる場所があればそれは間違いなく絵画展にもなる。また1980年代半ばには絵ではなく写真を採用したバックグラスが用いられた時期がある。例はさほど多くはないが、それらが並ぶことがあればこれも立派な写真展になりそうである。

  • (2)ディスプレイ / display

    得点やプレイ状況を示す情報表示部。

    近代以降のピンボールではディスプレイに多種多様の情報が表示される。スコアはもちろん、ボール数やクレジット数などの基本情報。リプレイ点やハイスコアなど、プレイヤーの目標も示される。"EXTRA BALL IS LIT" や "TILT" など、プレイの進行に応じた実況も。そしてルールの説明と共に狙いどころも指示してくれる。マッチナンバー(match number=ゲーム終了時のくじ引き当選番号)も "GAME OVER" の表示もディスプレイが担う。今や当たり前になっているそれら様々な表示のどれもこれもがディスプレイの中に集約されるに至るまでには、一言では語れない長年にわたる変遷があった(以下長文)。

    ピンボールの歴史が始まった1930年代初頭の機種にはディスプレイどころかまだ(6)バックボックスも存在していない。(4)プレイフィールドにある個々のホール等には数字が添えられており、プレイヤーは(17)ボールシューターで慎重に打ち出したボールの行き先によって巧拙を競った。ちなみにそれは(30)フリッパーが登場するまでまだ十数年を待つ時代のことである。初期の機種では1つ1つのボール(例えば10個)を打ち放って各ボールが入ったホールを見て点数を足し算していたが、多少便利にするために数字を並べて示すなどの工夫は1930年代前半に早々と始まっていた(非電気式で始まり、すぐに電気式に進歩した)。トータライザー(totalizer=合計器)という仰々しい名称からも、当時そこそこの先鋭的機構だったことが想像出来る。そのような表示器はディスプレイの元祖と言えるが、(4)プレイフィールドの中の仕掛けの一部であった。またプレイされたボール数を示す方法も数字に置き換えて表示するのではなく、落ちたボールそのものの個数(巡回再使用式ではないので)を見せて表わしていた。これは陳列という意味の「ディスプレイ」ではあるが、表示機構としての「ディスプレイ」とは言えない。ところでボールの再使用に関しては例外もあり、(17)ボールシューターの項で触れるセンターボールシューターの一種であるタレットシューター(turret=砲台 shooter)によって1つのボールを5回打ち出す機種が1950年代に見られる。

    1930年代半ばにはスコアや他の数字(ルール上でプレイに関わるもの)などを示すために小さな箱が設けられ始め、1930年代後半までにはそれは近代と同程度の大きさの(6)バックボックスになって行く。スコア表示と他の数字の優先度は試行錯誤で揺れていたようだが、1940年に入る頃にはスコア表示が欠かせないものになる傾向が見られる。スコア表示と言ってもこの時代に開発されていた表示方式は(1)バックグラスのあちらこちらにところ狭しと施された数字を内部から電球が照らすもので、これはバルブスコアリング(bulb=電球 scoring)と呼ばれる。まだ(30)フリッパーという機構が登場する前はプレイタイムが短いこともあり、あくまで表示部からの想像に過ぎないが数万点のスコアが出せればかなり上手いということだったのではないだろうか。その後は(30)フリッパーが搭載されたことでいくらかプレイタイムが延びたからだろうか、1940年代後半にはスコアの規模が大きくなって百万点の表示がされるようになる。しかし何れにせよバルブスコアリング方式の機種においては、各桁単位ごとにそれぞれ離れた位置に示された数字を足し算してスコアを知る必要がある。例えばMILLIONの数字のグループの中の "2" とTHOUSANDの数字のグループの中の "300" と5桁の数字のグループの中の "70,000" という3つの電球の点灯で2,370,000点、といった要領である。

    ところで "TILT" の表示については1930年代半ばには(4)プレイフィールドの奥の方で小窓のような枠に示す機種や手前部分の時計の針のような仕掛けのティルトメーター(tilt meter)で示す機種が見られる。(1)バックグラス電球で表示される機種も見られるが、それが定着するのは1930年代末頃である。

    スコア表示の方式には1950年代前半に0~9の10種の数字が縦に回転するドラム式リール(drum score reel)が登場する 。それまでの足し算は不要になり、一元化された総得点だけがシンプルな位取り記数法表記によって示された。1950年代末に見られる宣伝文句には "Features large black numbers on all white background. Player can easily read score at a single glance. Especially efective while ball is in play." (白地に大きな黒数字を採用。プレイヤーはひと目で簡単にスコアが分かる。ボールのプレイ中は特に効果的。)とあり、それまでとの違いの大きさが表われている。当初はドラム式リールユニット3個での表示だったが、このユニットの数が増えると製造原価も重量も増す。それでも4人用機種で3×4=12個のユニットが用いられるものも早期に登場しているので、この革命的な新表示方式への製造側の意気込みは強かったのだろう。また遊ぶ側にとっても、スコアが分かりやすくなったこと以外に大きな魅力があった。それは2人用機種や4人用機種の登場によって、複数のプレイヤーが1球ごとに抜きつ抜かれつの競争が出来るようになったことである(但しそれ以前にバルブスコアリング方式の複数プレイヤー用機種もいくつか試みられていた)。その進化を強調するために、1950年代半ばの機種の(1)バックグラスには "It's more fun to compete" (競うともっと面白い)と "1 or 2 can play at the same time" (2人で同時に遊ぶことも出来る)という大きめな文字による表示が出ているのである。それまではもしも2人が競おうとすれば1人用の機種で別個に1ゲームずつプレイしなければならなかった訳で、2人用の機種の登場で1球ずつ交互にプレイ出来るようになったことで勝負の展開が飛躍的に面白くなったのは明らかである。これは野球の試合で先攻チームが1回表から9回表までの攻撃を先に終わらせてから後攻チームが1回裏から9回裏の攻撃を行なう、などというあり得ない形を想えば分かりやすいかも知れない。そんなドラム式リールではあるものの一気に旧式のバルブスコアリングに取って代わってしまうことはなく、定着したとは言えない状況が5年程度も続く。その期間は新機種が登場してもスコア表示に関してはバルブスコアリングの機種(およそ6割)もあればドラム式リールの機種(およそ4割)もあると言う状況だった。想像出来る要因としては、ドラム式リール方式が優れていることは分かっていても本体価格が高くて手が出せないという店舗が多かったのではないかということがある。そしてようやく1960年代初頭にドラム式リールは標準仕様となる。

    しかし新方式によるスコア表示にも、点数の規模という点では弱点があった。ドラム式リールユニットを3個備えた状況で最低加点単位を1とする機種ではスコアは最高でも999点である。バルブスコアリングでの百万点単位のスコアに馴染んでいたプレイヤーにしてみれば、この規模縮小には物足りなさを感じたに違いない。これはそののち始まる表示桁数を増やすための開発史の起点になったと思える。1950年代後半に入ると、(1)バックグラスのスコア表示部最高位の左隣に「リール部の窓と同様な枠」を設けてその裏で電球が点灯すると数字の "1" が現われる工夫がされた。この仕組みでオーバーザトップ(over the top=桁越え)を1周目だけ示すことが出来るようになった(最高表示は1,999点)。これならばリールユニットの個数は増えないので製造原価と重量には響かない。しかし数年が経った1960年代初頭には1人用機種でリールユニットが4個(最高表示は9,999点)のものが登場する。この始まりはアドアボール式(本項でのちに触れる)の機種であり、スコアも伸びるのでユニットを4個にしたと考えられる。実際それに対してアドアボール式ではない機種ではまだしばらくの間は最高表示が1,999点のままであった。そして1960年代末までにはどんな機種(4人用であろうとも)でもユニット4個を備えての9,999点表示がほぼ標準になって行く(例外的にはユニット5個で99,999点まで表示する2人用機種もある)。

    桁数を増やすための手段は他にも既に存在していたが、それが1970年代に入ると一般化する。それはダミーゼロ(dummy zero)というからくりである。スコア表示部最下位の右隣に、リールの一部のように見えるが決して動かない "0" を付け加えることで下駄を履かせてスコアを10倍に見せ掛けたのである。この時期にはドラム式リールユニット4個にダミーゼロ1個を加えて最高表示を99,990点とする機種が見られる。これもアドアボール式の機種で始まっているものの表示上でただ10倍に見せ掛けるだけなので、スコアが伸びるからということが理由だったとは考えにくい。

    ちなみにダミーゼロに関してはその取り付け個数は1つだけではなく、2個どころか3個も4個も備える機種がある。1953年に登場したほぼ初のドラム式リールスコア表示の機種において、実は既にダミーゼロが搭載されていた。そこでは3個のリールユニットと4個のダミーゼロで7桁表示(最高表示は9,990,000点)がされていた。これは百万点単位のスコア表示とはなるものの、実際に数字が動く桁は左側の3つだけである。なんとも突飛な仕様に思えるが、当時標準だったバルブスコアリング機のことを考えれば意味が見えて来る。この時代は(4)プレイフィールドのホールやレーンに表記されている点数のほとんどが10万単位である。この表記の状況を変えることが物理的にも感覚的にも容易でなかったとすれば、スコアを対応させるために4個のダミーゼロを並べるのは必然だったのかも知れない。しかし苦肉の策とも言えるこの仕様は市場では不評だったようで、3か月の間に販売された6機種に見られるだけで姿を消した。そのためなのかダミーゼロという仕掛け自体がその後は禁じ手のようになっていた感もあり、結果的に初登場から一般化するまでには10数年間も掛かったことになる。なお順番としては1年後の1954年に他社から登場したものが、リールユニット3個でダミーゼロなしの最高表示999点の仕様であった。一転してこの方向になると、(4)プレイフィールドの点数表記は逆にスコア表示の規模に合わせてあらかた1万分の1にされている。最低単位としてバルブスコアリングの機種では恐らく1万点だったと思われる(29)スリングショットにはご丁寧に "1" (=1点)と記されている 。

    ダミーゼロを部品としての側面でたどると、通常のリール( "0"~"9" が示されている)を丸ごと持って来てコイルやスイッチなどによる駆動部だけを省いたものを "0" に固定して使ったこともあったようである。しかしこれでは無駄が多いので、"0" だけが示されたほぼ平らな板がダミーゼロの専用部品として使われるようになる。またリールの一部のような湾曲板を用いて "0" の上下に "9" の下端と "1" の上端をチラッと見せるお洒落な工夫も次第にされるようになり、粋な計らいが感じられる。

    1970年代、ピンボールは世界の多くの国で黄金時代と言える第一次ブームを迎えることになる。テクニックを駆使してスコアを競うゲーム性が市民権を得て、偶然だけに因るものではないことがアメリカの法廷で認められるのもこの時代半ばの1976年である。そのような流れに結び付いた背景にはスコア表示方法の進化が続いたことも挙げられるだろう。組み合わせの要素になるのは、「リールユニット」と「ダミーゼロ」と「オーバーザトップの電球表示」である。

    まず1970年代初頭には、それまでの最高表示9,999点にダミーゼロが1個加わった最高表示99,990点の機種が出回る。続いてすぐに表示部最高位の左隣にオーバーザトップの電球表示 "1" が加えられ、最高表示は199,990点となる(ちなみにこの際のとある機種では量産前にユニットを5個にして最高表示を1,999,990点とすることも試みられていたという)。オーバーザトップ用の電球表示にも1970年代前半に変化がある。それまではスコアの左横に並べた窓に "1" を灯らせたのだが、そこから独立して丸々 "100,000" と印刷された部分が電球の点灯で示されるという形が出て来た。つまり「リールユニット4個」+「ダミーゼロ1個」+「オーバーザトップ表示 "100,000"」によって最高表示を199,990点とする訳で、いよいよこの時代なりにスコア表示が洗練されて来たことにうなずける。

    1970年代半ば頃にはもう1桁増やして最高表示を1,999,990点とした機種がいくつか見られる。意外なことにこれはリールユニットの個数を増やさずに上の桁を増やす方法で、オーバーザトップ用の電球の数を増やして桁越えを19周分も表示するのである。(1)バックグラスの面積をそこそこ占めてしまうのだが、"100,000", "200,000", "300,000",…, "900,000" そして "1,000,000" と印刷された部分を桁越えのたびに電球が示すのである。最高表示に達すると "1,000,000" と "900,000" の2つが点灯して1,900,000点となる。ここで用いられた電球表示の点灯消灯切り換えのための回路は恐らくバルブスコアリングのものと同じと思われ、埋もれてしまった技術が15年ほど経って活かされたことになるのだろう。

    そして1970年代後半、リールユニット5個とダミーゼロ1個での最高表示999,990点が1つの完成形となった。4人用の機種ではリールユニットは20個にもなって製造原価はかなり上がったに違いないのだが、それでもピンボール業界(製造者も運営者も)が大いに潤うほどにピンボール人気が高まっていたのがまたこの時期の事実であろう。ドラム式リールでのスコア表示はこの1970年代末に終わってしまうが、この変遷の末の「ダミーゼロ1個」はその後も「下1桁は "0"」という形で受け継がれた。近代になってピンボールのスコア表示方式は更に進化を続けたが、それでも加点が1点単位にも100点単位にもならないのはこの流儀がなんとなく守られているからに違いない。

    ところでドラム式リールに関しては、スコア表示に採用されるよりもかなり前の1940年代末にはクレジット数の表示に用いられていた。そしてクレジット数の表示については、更にそれよりも前には回転する円盤に示した数字を電球の点灯で投影する方式(replay projector unit)が採用された機種もあった。スコア表示と同様にドラム式リールでのクレジット表示も定着していたが、1970年代半ばの一時期には回転する円盤に施された数字を扇状の窓(half-moon credit window)から見せる方式を採用した機種がいくらかあった(プレイヤーの不正防止対策試行だったとある)。

    他にもドラム式リールはアドアボール(add-a-ball)タイプの機種などでボール数の表示に使われたこともある。アドアボールタイプとは "BALLS TO PLAY"(あと何ボールをプレイ出来るか)を表示し、その数字が増加するものである。逆にエキストラボールタイプの機種では "BALL IN PLAY"(何ボール目をプレイしているか)を表示してその数字が減少する(但しエキストラボールをプレイする際のボール数表示は減らない)という形になっており、近代以降ではほとんど全ての機種がこの方式となっている。ついでに言えばアドアボールという用語は1990年代頃からは異なる意味で使われるようになり、それはマルチボール中に追加のボールが出現することを指している。いろいろあるピンボール用語の中で、この「アドアボール」の持つ2つの意味は間違いのないように押さえておいてほしい。

    スコアとクレジット数はドラム式リールで表示されることが定着したが、その時代でも電球による表示は多用されていた。マッチナンバー表示には10個が使われた。ボール数表示には5個(1ゲームは3ボール制だけではなく5ボール制もあるため)は必要であり、またアドアボールタイプの機種では10個ほどの電球が使われた。ちなみにボール数の電球表示は(4)プレイフィールド(11)インストラクションカード(12)ボトムアーチの中に取り込まれているものもあった。

    スコア表示に関しては1960年代半ばにネオン管の一種であるニキシー管(nixie tube)でスコアを表示する機種を製造したメーカーもあった。

    1970年代後半にはそれまでのエレメカ機(電気機械式)からソリッドステート機(集積回路や基板による制御式)へと技術革新され、それに呼応してセグメント(segment=区切られた部分)ディスプレイが採用された。始まりは「日」の字型が並ぶもの(6桁の場合「日日日日日日」)で、1つの桁の部分がセグメント7つからなるため「7セグ」(もしくは「7画表示」)と称される。これは7本の棒の点灯消灯を組み合わせて、例えば "280" を漢字の形にたとえれば「己日口」のように表示する。なおセグメントディスプレイの最下位の桁は、前述のように最終期のエレメカ機の慣習を引き継いで最低加点単位を10にしているために通常は1の位には "0" 以外を表示しない。

    このような数字表示用のヌーメリック(numeric)ディスプレイでも英字の表現(大文字小文字を取り混ぜて)は可能だったが、1980年代半ばには英字をより分かり易く表示出来る英数字表示用のアルファヌーメリック(alpha-numeric)ディスプレイが使われるようになる。一般的なものは各桁が縦長の英国旗のような形のもので、上辺と下辺が横1本棒なのを除いて他の6本の線は中点で2分割される「14セグ」である。これに加えて "." (ドット)と "," (カンマ)が表示出来るようになったものが「16セグ」である。なおメーカーによっては「7セグ」に縦の1本棒(中点で2分割)をやや左寄りに加えた「9セグ」を採用して英字を表わした。 英字表示が容易になったこれらのディスプレイは、スコア以外にプレイの状況やルールなどの情報をプレイヤーに伝える役割も担うようになった。加えて記号やその他の表示も織り交ぜて絵文字表現のような味のある工夫でプレイ中に様々な演出が可能となった。プレイヤー向けだけではなく、表示方法の進化は運営側のメンテや設定の作業も格段に便利にしてくれた。

    スコアの表示部はバルブスコアリングやドラム式リールの時代はもちろん、セグメントディスプレイでもほとんどの機種において(1)バックグラスの絵柄に溶け込んで存在するものだったが、1980年代半ばからディスプレイの分離移動という変化が出始めた。セグメントディスプレイが左右スピーカーの間に入ったり、(6)バックボックスの上部や下端に据えられる機種が現われ始めたのである。その後は各メーカーによって一進一退の試行錯誤が行なわれた。最終的にはこのあと登場するドットマトリクスディスプレイの時代になってからしばらく経った1990年代前半頃、完全に(1)バックグラスから独立することになる。

    セグメントディスプレイの表現能力は、長年続いていた電球による様々な表示を吸収して行く。1980年代後半頃までのゲーム内容ではボーナスとその倍率がまだ大きな得点源であり、ボーナス関連の表示が(4)プレイフィールドの一等地を占めていた。そこ に居並ぶボーナス表示灯は、プレイ中にはボーナスの加算を分かり易く示した。そしてボーナスコレクト(ボーナスがスコアに加算されること)の際には、溜め込んだボーナスを1つ1つ支払う様子を見せるという演出を担っていたものだった。しかしその役割はセグメントディスプレイの中での掛け算や足し算に変わった。ただ、中には一等地でのボーナス表示を保つために(4)プレイフィールドの中央でセグメントディスプレイをボーナス表示に用いてみた機種もあった。セグメントディスプレイでのボーナス計算表示が一般化してからもまだしばらくはボーナス重視の機種は多く、1980年代半ばのある機種では大量のボーナスを獲得した証としてボーナスコレクトの際にセグメントディスプレイでボーナスの減算とスコアの加算を示しながら異様な高音を数分間にわたって発するという演出があった。それほどの重みがあったボーナスの存在価値は次第にジャックポットでの大量得点ルールの隆盛の影に隠れてしまい、1990年代半ば頃にはディスプレイでの計算表示さえも左右の(16)フリッパーボタンを同時に押すスキップ機能によって瞬時に終わらされるほどになる。余談だが(4)プレイフィールドの中央大通りにボーナスの表示灯が並んだかつてのあの状況には、ボーナスラダー(ladder=段階, はしご)という呼び名がある。

    セグメントディスプレイが採用された当初はマッチナンバーとボール数とクレジット数を表示するための5つ目(4人分のスコア表示以外)のディスプレイが別個に設けられていた。しかし1980年代半ば以降にはスコア表示用のものがこれを兼用するようになって5つ目のディスプレイは姿を消した。実はこれによってマッチナンバーはゲームオーバー直後の表示が終わると消えてしまうことになり、必要性は低いが歴史の中では大きな変化となった。また "1UP, 2UP, ・・・"(プレイヤーの打順指示表示)や "TILT" や "SAME PLAYER SHOOTS AGAIN" や "GAME OVER" といったプレイの進行に関わる表示も電球方式ではなくなって行き、それまで各所に デザインされていたものがディスプレイでの表示に集約された。なおセグメントディスプレイが(12)ボトムアーチに組み込まれていて、スコアやクレジット数やボール数を表示する機種もある。

    ところが1980年代の末から1990年代初頭に掛けての機種では、何でもござれとなったディスプレイだけに任せずに(1)バックグラスの中でゲームルールに関しての電球による表示が復権していたことがある。いくらかの種類の表示が施されたが、最も脚光を浴びたのはジャックポットの値であろう。これは100万点を単位にした数字の表示が(1)バックグラスの中で増して行き、プレイヤーを誘惑するものだった。歴史を振り返れば、それらは30年以上前のバルブスコアリング時代における数字の配置によるデザインを再現しているように見える。ちなみにジャックポットの値の表示に関しては、それ専用の セグメントディスプレイを備えた機種もある。

    セグメントディスプレイの機種でもスコアが桁越えしてしまうことは避けられず、オーバーザトップの表現は課題となる。初期の頃の6桁や7桁の表示しかない機種でスコアが桁越えしてしまうと、機種によっては桁越えの賞としてクレジットが得られることはあっても表示に関しては何も起こらない。プレイヤーが高いスコアの足跡を残すためには、俗に言う寸止め(桁越えギリギリに迫ったところで故意にプレイを止める)の技術が必要になる。のちに桁越え対策がされた機種での方法としては、桁越えをした瞬間に上位の空位の桁全てをブランクではなく "0" で左側から埋めるというものがある(但しこれはゲーム開始時のスコア表示が "000000" のように全桁 "0" で埋まっていた初期のセグメントディスプレイ機でははなく、下2桁のみの "00" 表示で開始する機種でのこと)。そしてゲーム終了後にハイスコア登録されたスコアは1の位を含む全ての桁に "9" を並べて "9,999,999" と表示し、桁越えした事実を表現するようにした。この場合はハイスコア表示を見ただけでは最終スコアは不明である。ゲームオーバー後のスコア表示が残っているうちはそれを見れば分かるが、しかしそれでも桁越えを何周したのかを示すことは出来ない。他に希少な例では、桁越えが起きると同時に1の位の "0" の表示を取りやめて全桁の数字を1つ右にずらす(つまり表示中の数字を10倍したものが実際のスコア値)という工夫も見られた。

    近代以降ではハイスコアはディスプレイに表示されるのが当たり前になっているが、エレメカ機の時代にも様々な工夫がされていた。1960年頃には目標スコア(score to beat)を(1)バックグラスの裏側からカードを差し込んで表示するものがあった(あくまで店側が示す目標なので、言わばハイスコアの初期設定値)。同じ頃にはこれまでの最高得点記録(previous high score)を油性ペンで書き込むための小さな枠を備えたものもあり、プレイヤーが腕を競っていた様子が見て取れる。セグメントディスプレイの時代になるとこれまでの最高得点がプレイ中以外に表示されるようになる。この場合は(1)バックグラスの電球表示 "GAME OVER"と "HIGH SCORE TO DATE" が交互に点灯するのに呼応して、ディスプレイは終了時スコアとハイスコアを示した。更に1980年代半ばにはハイスコア1~4位がイニシャル入力を伴って表示されるようになり、それらはプレイ中に(16)フリッパーボタンを押したまま待てば見られるようになった(プレイに必要な他の情報も示す)。情報はプレイ中でなくてもディスプレイに順次表示され、そののち1990年代半ば頃になると(16)フリッパーボタンを押すと、より便利に利用可能となる。それは両側同時押しで終了時スコアを表示(試合などで記録する必要に応じた改良)したり、片側で情報表示のページをめくるというような機能である。

    1990年代初頭からはドットマトリクスディスプレイが採用された。これは小さな丸い点を並べて(変遷を経た標準的なもので縦32個×横128個)その点灯消灯によって表示するディスプレイである。ドラム式リールやセグメントディスプレイではスコア表示の桁数に制限が付き物だったが、ドットマトリクスディスプレイではほぼ無制限と言って良いだろう 。またグラフィック 表現 の自由度も増し、プレイ中のお遊びとしてビデオモード(ディスプレイを用いるビデオゲーム)が取り入れられるようにもなった。またアイコンや簡易な図式表示も可能にし、運営者用のテストモードなども更に便利にした。他に(16)フリッパーボタン(13)スタートボタンによるコマンド入力で特別な情報やグラフィックを表示するような遊びであるイースターエッグ(cows and easter eggs)を作り手が仕込むことも、この時期から多くの機種で見られる。

    単色のドットマトリクスディスプレイでも何段階かの階調によってグラフィックに濃淡を表わすことが出来るが、近年では表現を更に多彩にするためにカラードットマトリクスディスプレイを既存の旧機種に対して供給することを部品メーカーが行なっている。

    20世紀末には試みにブラウン管モニターをディスプレイとして搭載した機種が現われた(ブラウン管モニター自体は1980年代初頭にビデオゲームのプレイ目的で搭載された機種がある)。これはスコアに加えて様々な映像もカラーで表示するものである。このブラウン管モニターは(6)バックボックスの中腹の高さに仕込まれているが、画面を斜め下に向けた状態なのでプレイヤーの視界に直接は入って来ない。表示されるのは反転倒置画像で、それが表面に特種加工を施した(3)プレイフィールドグラスに反射する。プレイヤーの眼には正しい向きの画像が映り、それが(4)プレイフィールドの奥の方につながるように重なって見える。このようになるとそこでの表示にはディスプレイという区切りは付け難く、(4)プレイフィールドの延長がやや立ち上がって様々に変化する合成画像と言える。この斬新な仕様は折りしも崩壊寸前だった20世紀末のピンボール市場に投入された大きな賭けだった。しかし製品化されて市場に出回ったのは残念ながら2機種だけであり、結果としてこれで終焉を迎えた老舗一流メーカーが世紀末に咲かせた最後の一花になってしまった。

    2010年代半ばからはカラー液晶ディスプレイが採用されるようになった。これによって版権ものの機種であれば映画などの映像そのものを流すことも出来るようになり、またビデオモードでの画像も普通のビデオゲーム並みになった。プレイ中のルール説明はレイアウトや色彩にも工夫しながら事細かに表示している(親切である一方、ルールの複雑化を容認する要素になっている)。カラーで様々な映像を表示する目的は上述のブラウン管モニターでも達成可能だったが、大きさも重量も軽減されてしかも画質の良い液晶は圧倒的に優位である。新興メーカーからは(6)バックボックスの前面部の大半を占める大型カラー液晶ディスプレイが様々な画像を表示する機種が新機軸として押し出されており、これは(1)バックグラスとディスプレイの在り方にも変化をもたらしている。また小型のカラー液晶ディスプレイを(4)プレイフィールドの中に備え付ける機種もあり、プレイヤーの視界に入りやすい位置で情報を表示している。

    ちなみにそんな近年において古い時代の再現を意図した機種の製造が行なわれ、そこではスコアやクレジットの表示にはドラム式リールが用いられた。ボール数などのプレイ状況に関しても電球表示を模している(光源はLED)。そのような機種でありながらも(11)インストラクションカードの一部分を占める位置に単色のドットで表示をする小さなディスプレイも仕込まれた。

    およそ80年のピンボール史の中で「プレイの結果を数値として示すための表示方式」に関しては、 [バルブスコアリング](1930年代半ば) → [ドラム式リール](1950年代前半) → [セグメントディスプレイ](1970年代後半) → [ドットマトリクスディスプレイ](1990年代初頭) → [カラー液晶ディスプレイ](2010年代半ば)というのが大まかな流れである。振り返ってみると20年程度が経つと変化が起きている。

  • (3)プレイフィールドグラス / playfield glass

    (7)キャビネットの上面で(4)プレイフィールドを覆う透明なガラス板 。

    近代の標準的なものは厚さが3/16インチ(約4.8mm)あり、強化ガラスなので簡単には割れない。もし割れても粒状になるため危険は少ない。古い時代のものは割れると普通に鋭利なかけらも出る。

    近年は外光反射防止加工されたものもある。

  • (4)プレイフィールド / playfield

    ゲームが行なわれる盤面。

    大きさ(幅×奥行)は歴史の中で様々に変わって行ったが、基本的には(7)キャビネットの大きさ(幅×奥行)に依存している。

    基本になる板は木製で、そこに様々な材質(金属, 木, プラスチック, ラバー等)による部品が取り付けられて作られる。古い機種では表面の塗装がはげることが避けられなかった。また盤面でのルール表示のためのプラスチック製透過部(プレイフィールドインサート=playfield insert)は電球の熱によって変形しやすく、皿状になるとその場所でのボールの動きにかなりの影響を及ぼす。近代になってからはプレイフィールド表面のコーティング技術も進歩して行った。他方、1980年前後にはプラスチック製のプレイフィールドがわずかな台数で試験的に導入されたことがある。また近年はLEDが用いられることによって電球の熱による諸問題は解消されたと言える。

    古い機種ではティルト(揺らし過ぎに対する罰則)の検知部がプレイフィールドの裏にもあることが多い。

    二段構造(バイレベル=bi-level)の機種や、地下部分(lower playfield)にボールが運ばれる機種もある。更に複雑な多段構造(マルチレベル=multi-level)の機種もある。

    プレイフィールドは通常は(7)キャビネットに組み込まれているものだが、(6)バックボックスにまでプレイフィールドが拡張されている機種もある 。

    プレイフィールドの表面は平らで滑らかなものだが、極めて珍しい例外として月面(moon surface)の雰囲気を出すことを狙った凹凸のある滑らかなプレイフィールドを持つ機種がある。

    ちなみに当サイトもそうであるように、様々な説明機会でプレイフィールド内の地域を示すために「上段/中段/下段」及び「左側/中央/右側」という表現を用いることがある。これは大雑把に「横に3分割」及び「縦に3分割」した各部分(3×3で9分割)を指している。

  • (5)コインドア / coin door

    (7)キャビネットの手前面にあり、施錠されている扉。

    古くは木製だったが、1950年代後半頃に金属製になった 。

    (14)コインスロット(18)コインリターンが取り付けられている。受け入れられたコインはキャッシュボックス内に収まる。

    ソリッドステート機(集積回路や基板による制御式)において、運営者が設定やメンテナンスの際に使用する操作ボタン等は多くの機種でコインドアの裏側にある。

    不正行為を防止するためのスラムティルト(slam tilt)の検知部はコインドアの裏側にある。小さなおもりの付いたブレードスイッチが揺れて反応すると、罰則として一旦電源が切れたことに相当する状態になる。古い機種では(4)プレイフィールドの裏側にもティルトの検知部があった。これらが悪質でもない普通のプレイに対して敏感に反応してしまうトラブルもあったりして、プレイヤーには悩みの種になることもある。時代と共に不正行為も減ったからなのかコストダウンのためなのか、近年の機種ではスラムティルトが省かれている機種もある。但しその場合でも回路は設けられていてオプションとして検知部を追加することが出来ることもある。

  • (6)バックボックス / backbox (または ヘッド / head)

    (1)バックグラスなどを含む木製の箱状のもので、ピンボール機本体の上部奥の高い位置を占める。

    内部にあるのは古い機種では主に得点表示用のメカや数多くの電球、近代以降の機種では主に基板やスピーカー。

    ノッカーが設けられている機種もある。これはコイルの作動でバックボックスを内側から強く叩いて効果音を発生させる機構。再ゲームの条件を得てクレジットが増加するときなどに鳴る。1990年代半ばにはこのコイルを省いて合成音でノッカー音を鳴らす方式が登場している。

    バックボックスの横幅×高さは近年の機種の一例では27と3/4インチ(約70cm)×28インチ(約71cm)で、組立て設置時の天板部は同じく一例では75と1/2インチ(約192cm)の高さにある。この70cm×192cmは、ほぼピンボール機全体の横幅と高さを表わす数値(他に飾り物が付属している場合を除く)である。

    近代以降は少なくなったが古い機種にはバックボックスの中で様々な仕掛けが動いてゲームを演出するものが多かった。これはメカニカルバックボックスアニメーションと呼ばれる。例えば温度計を上げ下げしたり樹脂製のボールを増減(ボーナスの表示にも活用)させたり、また矢印をクルクル回してくじ引きをするようなバックボックススピナー(spinner)など多種多様なものがある。魅力的な機械仕掛けの動きには制作側の工夫と努力が詰まっている。なお(1)バックグラスの項で触れたバックグラスライトアニメーションとは別のものである。

    バックボックスの左右側面には各機種様々な絵柄が描かれている。かつては木板に直接印刷されていたが、1990年頃にデカール(decal=絵柄の印刷された粘着シート)を張り付ける方法が取り入れられ始めた。これで機種ごとの生産台数を気にせずに絵柄なしのバックボックスを在庫に持つことが可能になり、製造側には大きな利点となった。

    ところでピンボール機の運搬や収納などのために、古い機種ではバックボックスを(7)キャビネットから分離させることは比較的容易である。作業概略は内部のボルト4本を外して分離することと、相互間をつなぐケーブルのコネクターを数か所抜くことである。更に(8)レッグを外して(7)キャビネットを立てる(背面を接地)ことで収納用の床面積を小さく出来る。これが近代以降の機種ではバックボックスは分離されずにヒンジ(蝶番)で前方に90度倒されて(7)キャビネットと一体化する設計に変化する。なお製造元からの出荷時のピンボール機はこの折り畳まれた状態で箱詰めされている(寝かせる場合と立てる場合がある)。

    逆に、組み立てたピンボール機のバックボックスは安全のためにしっかりと(7)キャビネットに固定して運営する。4本だったバックボックス固定用ボルトは1980年頃から2本になって行った。またヒンジで起こす方式の機種ではボルトで固定する前に背面の噛み合わせ金具で仮固定するようにもなっている。1990年代に入るとクイックロック(Quick-Loc)という画期的な方式が開発された。これは背面の内部に仕込まれている固定用金具をレンチで回して噛み合わせるだけのもので、文字通りに素早く10秒足らずで固定作業が完了するものである。バックボックスの内部でボルトを使うことがないので(1)バックグラスを外す必要もないのが大きな利点である。その点においては同じもので、近年ではボルト2本を使って背面で固定する方式も見られる。

    そもそもピンボールの歴史が始まった1930年代初頭の機種にはバックボックスと呼べるものはなかったが、マーキー(marquee=劇場などの入口のひさし)という小さな立て札を設けてゲーム名などを示す機種もある。1930年代半ばになると低い小さな箱(厚みのある板状のもの)が据えられるようになり、バックボード(backboard)という名称が残されている。それが1930年代後半までには近代と同程度の大きさのバックボックスに変わって行った。なおライトボックス(lightbox)という呼び名もあるが、これは文字通りに数多くの電球で光り輝いていた時代を表わしている。

  • (7)キャビネット / cabinet (または ボディ / body)

    (4)プレイフィールドの収まる木製の箱状のもので、ピンボール機本体の大部分を占める。

    内側の底部にはエレメカ機(電気機械式)では回路を制御するリレーやモーターやスイッチ、また効果音を出すための鉄琴などのアナログメカが収められている。近代の機種ではそれらがなくなって底部には低音用スピーカー、そして側面には一部の基板が取り付けられていることもある。

    プレイヤーの過剰な揺らしを制限するための振り子式ティルト(プラムボブティルト=plumb bob tilt)の検知部はキャビネットの左側面内部にある。振り子状のおもりが揺れて周囲の輪との接触で導通反応すると、プレイ中のボールが無効になるなどの罰則が適用される。古い機種では振り子と同様な位置に他のティルト機構があった。小さなレールの中にボール(プレイに使うボールより小振りのもの)が乗っており、プレイヤーがキャビネットを手前から持ち上げるような悪質な行為をした場合にはそれが奥側に転がる。そしてレールの末端のスイッチを反応させると、(5)コインドアの項で触れたスラムティルトが反応したのと同じことになる。この機構はボールロールティルト(ball roll tilt)というものだが、近代以降の機種ではほぼ見られなくなっている。

    プレイの演出のためにピンボール機が自ら振動する機種がある。これはキャビネット内に取り付けられた、回転軸に偏芯重りを持つシェイカーモーター(shaker motor)の作動によるものである。

    (6)バックボックスの項で触れたノッカーが設けられている機種もある。中にはクレジット増加のときだけでなく、プレイ中の演出用効果音として巧みに用いている機種もある。

    キャビネットの横幅は近年の機種の一例では22インチ(約56cm)。同じく奥行は51と1/2インチ(約131cm)で、これはピンボール機全体の奥行をほぼ表わす数値である。しかし正しくは(8)レッグの下部の広がり分が加わるので、同じく一例の示すところではピンボール機全体としての奥行は55インチ(約140cm)となる。ついでにピンボール機全体の重さは210ポンド(約95kg)で、出荷時梱包状態では230ポンド(約104kg)となる。

    ちなみに(6)バックボックスの項で運搬時の形態に触れたが、出荷時に折り畳んで箱詰めされた状態の大きさは近年の一例では幅31インチ(約79cm)×奥行31インチ(約79cm)×高さ56と1/2インチ(約144cm)となる(大雑把に言えば1:1:2の比率)。但しこれは縦に置いた場合の表現で、横に寝かせば幅31インチ(約79cm)×奥行56と1/2インチ(約144cm)×高さ31インチ(約79cm)となる。この縦置き横置きの寸法は船便での輸送台数に関わって来る。通常使われる海上輸送用コンテナには40フィートコンテナと20フィートコンテナ(ハーフコンテナ)がある。大きさは前者が長さ40フィート(約12.2m)×幅8フィート(約2.4m)×高さ8フィート6インチ(約2.6m)で、後者が長さ19フィート10と1/2インチ(約6.1m)×幅8フィート(約2.4m)×高さ8フィート6インチ(約2.6m)である(何れも外寸値なので、内寸値は若干小さい)。箱詰めピンボールを40フィートコンテナに縦置きで入れると3列×15行で45台となる。その上にはまだ空間があるので、そこに横置き状態のものを積んで載せると3列×8行の24台が加わって計69台となる。これが20フィートコンテナの場合は縦置きだけだと3列×7行の21台で、その上に横置き状態で3列×4行の12台を載せると計33台となる。かつては日本にも大量にピンボールが輸入されており、そのときの台数はこれらが単位となっていた。少量から順に「ハーフ(=21台)」, 「ハーフフル(=33台)」, 「ワンコン(=45台)」, 「ワンコンフル(=69台)」という要領で輸入をしたものだった。但しサンプル台などを空輸する場合はコンテナは無関係なので1台単位の輸入である。

    キャビネットの左右側面及び前面には各機種様々な絵柄が描かれている。かつては木板に直接印刷されていたが、前項の(6)バックボックスと同じようにデカールを張り付ける方法が取り入れられるようになった。やはりこれも機種に関係なく汎用キャビネットの在庫を持つことが可能になるので製造側には利点となった。

    キャビネットのサイズに関して、まだ小型だった初期(1930年代始め)のピンボールには幅16インチ(約41cm)×奥行24インチ(約61cm)という例がある。これはJIS規格のA2用紙(=書類でなじみのあるA4用紙を縦横それぞれ2倍)の大きさにほぼ等しい。近年のサイズに比べると驚くほどに小さいが、そもそもがカウンターの上やテーブルの上に置いて遊べるもの(counter game / table top)だったからである。当初から(8)レッグは存在していたが標準仕様であっても取り外し可能であり、またはオプションとして本体価格に上乗せされるような扱いだった。設置場所も酒場や飲食店がほとんどであれば、(8)レッグを取り付けずに卓上で使われることが普通だったであろう。ところがそんなピンボールの人気が高まると、テーブルの周囲にプレイヤーが群がってしまう。店舗にとってはピンボールの売上が高くなるのは歓迎であっても、一般客に迷惑を掛けることが問題となったようだ。その解決のためにも、1930年代半ば前には(8)レッグが取り付けられることが標準的になって来る。店舗の中でもテーブルから独立して床の上に置かれるように大きく変化する。そして卓上用という大きさの制限がなくなれば、ピンボール機は大型化も可能となる。近年では上に記した幅22インチ(約56cm)×奥行51と1/2インチ(約131cm)がほぼ標準的と言えるが、そこに至るまでにはメーカーや時代によって様々な仕様の移り変わりがあった。

    近代の機種の中にはワイドボディと呼ばれる幅の広いものも少なくなく、レーンやターゲットが多めに配置されたりして(4)プレイフィールドが賑わっている。逆に小振りのサイズで子供向けを意識した機種が近代の業務用ピンボール機の中にも存在する。また極端な例外ではボールそのものからして大きなサイズになっている巨大ピンボール機も歴史に刻まれている。他にはカクテル(cocktail)ピンボールとして分類される テーブル型の機種がいくらかあり、キャビネットの形状からして異種のものとなっている。またビデオゲームの隆盛期に合わせて直立型(アップライト=upright)キャビネットに収まったピンボール機(ビデオゲーム兼用機)も生まれている。

  • (8)レッグ / leg

    (7)キャビネットに取り付けて全体を支える4本の脚部。

    古くは木製だったが、1950年代半ば頃に金属製になった。当初の金属性レッグは赤などに塗装されていたが、(10)モールディングバー(15)サイドアーマーが金属製に代わる1960年頃からは、それらに合わせてレッグも無着色と言える金属光沢の銀色になって行く。1990年頃からは再び塗装による着色ものが主流となっている。

    長さは近年の一例では30と1/4インチ(約77cm)。但し(7)キャビネットの底部から出ている部分の長さ(前脚部と後脚部で異なることもある)はこれよりも短い。

    (7)キャビネットの項で触れたように、ピンボールの始まり(1930年代初頭)はテーブルの上に置いて遊ぶ小型のものだったのでレッグなしが普通だった。しかし基本仕様としてはレッグを用いていないがレッグ(木製も金属製もあり)を取り付けて床面に立たせることが可能なものもあった。その後1930年代半ば前にはレッグは基本仕様になり、今日ではレッグがないことはあり得ない。ちなみにレッグなしでベタ置きすることはプレイにも保管にも適していないが、そんな状態を俗称として「御座敷ピンボール」と言う(もちろん日本以外では通じるはずはない)。

    レッグ1本の固定にはボルト2本が使われることがほとんどで、それ用のネジ穴が(7)キャビネットの前後左右の4辺に各2個切ってある。近代の独特な機種では例外として、高さの大幅な変更のためにネジ穴が4辺に各4個(高い位置に2個と低い位置に2個)切ってある機種がある。それは全体的に小振りなピンボール機であって、高い位置の2個のネジ穴にボルトを入れてレッグを固定すれば子供用の高さになる。他方、低い位置の2個のネジ穴を用いれば一般的な高さになる。

  • (9)レッグレベラー / leg leveler (または アジャスター / adjuster)

    (8)レッグの下端にある高さ調整器。

    ねじ込み式で上下に微調整する。高さの調整と言うよりは傾斜の調整を行なう。横(左右)は偏りなく水平に、縦(前後)はプレイに支障が出ないように(4)プレイフィールドの傾斜を適正化する。近代以降の機種には気泡による水準器(bubble level)が(4)プレイフィールドの周辺に据えられているものがあり、縦方向の傾きを6.5度と推奨する例がある。

    水準器を基に調整すればほぼ問題ないが、実際のプレイでボールの動きに違和感がないかどうかを確かめることが必要。

  • (10)モールディングバー / molding bar

    (7)キャビネットの上面の手前で(3)プレイフィールドグラスを押さえているもの。

    フロント(front)モールディングバーやロックダウン(lockdown=厳重封鎖)バーとも呼ばれる。モールディング(鋳型)という言葉は金属製や樹脂製の成型部品に用いられるので、ロックダウンバーというのは木製の頃から使われている名称である。1960年頃に金属製になってからモールディングバーという言葉が使われるので、素材と呼称の関係には留意しておく必要がある。本項目の項目名は「ロックダウンバー」の方が相応しいかも知れないが、近代以降を中心にして考えたのであえて「モールディングバー」とした。ちなみに近年に発売された古い時代の再現を意図した機種ではこの部分が木製なので、それはモールディングバーではなくロックダウンバーである。

    プレイヤーの掌はほぼ常にモールディングバーの左右手前の角に触れている。冬期の朝の開店直後にピンボールをしようものなら、この部分がプレイヤーの手で温まるまでしばらく掛かる。木製(ロックダウンバー)の時代には、手に優しそうで温かみさえ感じさせる趣のある形状のものもある。

    素材が金属製になった当初は金属光沢の銀色だったが、1990年頃から塗装によって色が着くようになった。多くの機種では黒だが、赤や青や金など様々ある。その色はその機種の中で(15)サイドアーマー(8)レッグも基本的に同調し、特に黒以外の色はピンボール機全体の外観印象に占めるところが大きい。

    近年ではモールディングバーの上部にボタン(アクションボタンなどと呼ばれる)が付いている機種が少なくなく、それがプレイ中の様々な操作に用いられる。これはゲーム内容を多彩にする一方、複雑になり過ぎたり使い方が知られないようでは無用の長物にもなり兼ねない。古い機種でもボタンが付いていることがあり、(17)ボールシューターとして使われたりする。ちなみに1980年代初頭には(4)プレイフィールドに組み込まれたブラウン管モニターでのビデオゲームがピンボールのプレイに挿入される特異な機種が開発され、モールディングバーにはジョイスティックが取り付けられた。これはその時期にアミューズメント業界で大躍進したビデオゲームによって瀕死状態に陥らされたピンボールの試行錯誤の最たる例である。

    ところでモールディングバーをメンテナンス時に利用する便利な方法がある。近代のある時期からの機種では、メンテナンス時に(3)プレイフィールドグラスを取り外したのちに(4)プレイフィールド(7)キャビネットの前方側に引き出せる仕様が標準的になった。このせり出した状態での(4)プレイフィールドは中央部までは手が届き易くなるのだが、それでも奥の方は扱いにくい。ここでモールディングバーを(15)サイドアーマーの奥の方に橋を架けるように据え、(4)プレイフィールドの奥側を持ち上げてモールディングバーの上に置く。このとき(4)プレイフィールドの盤面の傾斜は水平に近くなり、(7)キャビネットの上面に浮遊するような状態になる。こうすれば(4)プレイフィールドの奥側は表面も裏面もメンテナンスがしやすくなる。もちろんこの方法は仕様外であって非公式なものであるが、このようなことも見出したもののひとつとして伝えておくべきかも知れない。但し仕様外の方法だけに安全確実なものではないので、くれぐれも手を挟むなどの事故を起こさないように注意してほしい。また(4)プレイフィールドの奥の裏には部品の通電端子も露出しており、通電時はモールディングバーによってショートする危険もある。なのでモールディングバーを布で巻くなどして絶縁する(傷付け防止も兼ねて)ことが必要である。またこのメンテナンス方法はピンボール本体の横から行なうスペースがある場合のみに限り、正面からは有効ではない。何れにせよもしもこの方法で怪我や物損その他の事故が生じても、責任は一切取れないのでこの点はあらかじめご了承頂きたい。

  • (11)インストラクションカード / instruction card

    (12)ボトムアーチの表面の左右に据えられた説明用カード。

    ゲームの遊び方やプレイ料金が記されている。アメリカ製ピンボール機では当然英語版だが、日本国内では輸入後に日本語版に作り直されていることもある。

    ルールの理解のためには、カードを読むこととプレイすることを少しずつ交互に繰り返すようなやり方が良いかも知れない。

    リプレイ点(プレイヤーのスコアが到達すると再ゲーム用のクレジットが得られる)も示されていることが多い。ちなみに1930年代には成績評価表(Skill Chart)を示してプレイの結果でプレイヤーのランクの目安にしていたものが見られる。

    プレイ料金を示すカード(通常右側)は特にプライスカード(price card)やコインカード(coin card)と呼ばれる。

    1960年代頃にインストラクションカードの枠内でプレイ中のボール数を表示(電球の点灯で)していた機種では、裏側にもう1枚のカードが入れられる。このボールインプレイカード(ball in play card)によって3ボール設定か5ボール設定かの表示を切り替えられる("GAME OVER"の文字もこのカードと電球で表示される)。

    インターネット上には新作旧作様々なピンボールについての自作インストラクションカードをダウンロード用に公開しているサイトが存在し、カラフルなグラフィックを含むカードがゲームの雰囲気に合わせてデザインされている。特に近年の機種の複雑難解なルールはこの小さなカードに全て書き表わすことが絶対に不可能である上にルール詳細はインターネット上で見付けられることもあるため、実用面を気にしないでカードを装飾物にしてしまうのも1つの方向性である。時代が変わったので、極端に考えれば昔のインストラクションカードの名残のデコレーションカードと呼ぶべきかも知れない。

  • (12)ボトムアーチ / bottom arch

    (4)プレイフィールドの下端を覆っている大きな蝶ネクタイ型のもの。

    (24)アウトレーンなどから場外に落ちたボールを(32)アウトホールに導く役割を持っている。

    表面には(11)インストラクションカードなどが取り付けられている。(25)キックバック,(32)アウトホール,(45)トローフはこのボトムアーチに覆われている。

    木製の時代を経て1950年代後半からは長らく金属製だったが、1990年頃からはプラスチック製のものもある。

    ボトムアーチに特殊なメカを組み込んだ機種もある。またボトムアーチの表面まで(4)プレイフィールドが広がっている機種もある。

    今日のボトムアーチは「アーチ」(弓形)と呼ぶほどに滑らかな形状ではない。それなのにこの名称になっている理由は、対になるトップアーチ(top arch)に気付いたときに解釈することが出来た。ピンボールが始まって間もない1930年代半ば頃には、(31)シューターレーンから出たボールがそのまま(4)プレイフィールドの周りを大きくぐるりと大旋回する機種がある。そのボールが沿うために(4)プレイフィールドの上端と下端には弓形に湾曲した通り道が形作られている。この部分の大きな板状のもの、上下それぞれがトップアーチとボトムアーチである。ボトムアーチに関しては、1930年代半ば頃の機種には滑らかな弓形をしている機種がよく見られる。しかしその中には実際のボールの動きがそのアーチに沿わないものもある。これは弓形にすることがデザインとしても取り入れられていたことを示しているように思える。ちなみにこの時代の機種には打ち出したボールが8の字型に旋回するものや、更に複雑な経路をたどるものなど興味をそそられるものがある。1930年代も末が近付く頃には弓形のボトムアーチを持つ機種は少なくなり、1940年代からは今日まで見慣れている「逆八の字」になっている。またトップアーチに関しては、大きな弓形が1980年頃まではほぼ標準仕様のように残っている。但しボールが(4)プレイフィールドをぐるりと大旋回することはなく、(33)アーチリバウンドに跳ね返されて(19)トップレーンなどに向かうという構造が多い。その後はルール構成の変化によって徐々に(19)トップレーンの存在価値が薄れ、そこへの導入となる横への動きを演出していたトップアーチと呼べる状態のものはほとんどその姿を消した。近年では単に(31)シューターレーンが曲がって延長されている程度である。なお近代以降の機種にも大旋回を連想させるもの実際に外周を回らせるものがある。

    エプロン(apron)やカードホルダー(card holder)とも呼ばれる。

  • (13)スタートボタン / start button

    プレイ開始のために押すボタン。

    1970年代頃はメーカーによってスタートボタンの位置はまちまちで、(14)コインスロットの脇や(5)コインドアに控えめに取り付けられていたために見付けにくい場合もあった。1980年代半ばになるとほぼどのメーカーでも(7)キャビネットの前面左上が定位置となり、迷うことがなくなった。1990年代初頭にはプレイ開始が可能な状態(クレジットがあるかフリープレイ設定のとき)ではスタートボタンの内部で電球が点灯する方式になり、その位置を目立たせるとともに点灯の意味が加えられて分かりやすくなった。

    プレイ開始後は2ボール目以降にスタートボタンを押す(クレジットがある場合)とプレイ中のゲームが破棄されて新たなプレイが開始されるのが一般的だが、誤って触れたときにそうなる事故もしばしば発生するものである。その防止のために1990年代初頭頃からは長押しをしないと機能しないようにプログラムが改善された。また設定上で長押しを求めるか求めないかを変更したり、全く機能させない(特に試合中の事故防止のため)ようにも設定出来る機種もある。

    スタートボタンと似たような位置(もしくは逆の右側)に他のボタンのある機種が1990年代半ば頃にいくらか見られる。これはバイイン(buy-in)ボタンやエキストラボールボタンと呼ばれ、クレジットを消費してでもゲームオーバーにしないで延長ゲームをプレイしたいときにプレイヤーが押す。つまりビデオゲームのコンティニューと同様に、最初からではなく続きからプレイをするためのものである(設定で無効や回数上限も決められる)。ゲームのルールが過剰とも言えるほどに深く難しくなったことから、このバイインがルールの奥の奥にある部分の達成を手助けすることになった。と同時にこれは特に上級プレイヤーを対象とした売上増進戦略でもあった(ピンボール市場に陰りが出ていた時期でもあり)。バイインでのプレイでは機種によって「スコアも継続するもの」と「スコアは00点からとするもの」があり、前者ではハイスコアの部門をバイインありとなしに分けるものもある。またバイインボタンを、プレイモードを変えることや裏技的使用に活用する機種もある。ちなみに同様な延長のためにバイバック(buy-back)という方式(ボタンを押すのではなくコイン投入によって)を取り入れた機種が1930年代から1950年代にいくらか製造された。

    スタートボタンの持つ他の機能として近代以降の機種ではハイスコアを出したプレイ後にハイスコアネームの入力に使ったりする。また運営者はメンテナンス用のテストモードなどの操作にも使う。(2)ディスプレイの項で触れたイースターエッグのコマンド入力用に使う機種もある。

    ところでエレメカ機(電気機械式)ではコインを入れた時点で(スタートボタンを押さずに)プレイ開始状態になることが特に1人用機種では一般的だった。ソリッドステート機(集積回路や基板による制御式)でも、あえてそれを可能にする設定項目を設けている機種がある。

  • (14)コインスロット / coin slot

    (5)コインドアの上方にある、コイン投入口。

    複数金種のコインに各々対応する複数個のコインスロットが設けられることもあり、日本では1970年代までよく見られた(十円玉, 五十円玉, 百円玉用に3個)。また2個設けている場合でも、どちらも同じ金種のコインに対応させておけば片側に不具合が起きたときのための備えとなる。近年は日本では単一金種のコイン(百円玉)だけに対応することがほとんどだが、他国では複数金種のコインに対応する形が続いている方が多い様子。

    ピンボールに限ったことではないが、近年のゲーム機用のコイン投入口部分はコインが詰まったときのためのイジェクト(eject=排出)ボタンの機能を兼ねているものもある。そうなる前はイジェクト機能のために別のボタンが設けられていた。

    古い機種にはコインスロットが(5)コインドアそのものには取り付けられていないものもある。

  • (15)サイドアーマー / side armor

    (7)キャビネットの上面の左右両端で(3)プレイフィールドグラスを押さえている細長いもの。

    古くは木製だったが(10)モールディングバーと同様に1960年頃に金属製になり、その着色に関しても(10)モールディングバーにほぼ準じている。

    進化形としては(16)フリッパーボタンの周囲を覆うことを兼ねているものがある。これはプレイヤーの手指でこすられることによる(7)キャビネットの磨耗を防止するための形状である。

  • (16)フリッパーボタン / flipper button

    (30)フリッパーを作動させるために、(7)キャビネット内にあるスイッチをオンにするボタン。

    (7)キャビネットの左右側面の手前上部にあるが、残念ながら目立たない位置なので初めてピンボールで遊ぼうとした人がこのボタンに気付かないことが非常に多い。

    2個より多く(例えば4個)の(30)フリッパーがある機種でもそのほとんどは左右一対のフリッパーボタンだけで操作するが、中にはフリッパーボタンが複数個あって個別に操作する機種もある。

    フリッパーボタンの近くに(30)フリッパーの操作とは無関係な他のボタンが設けられている機種もいくらかある。そのボタンでは簡単な仕掛けや(36)ディバーターを操作したり、また(24)アウトレーンに落ちそうなボールを磁力やメカによって救ったりする。本項で後述のレーンチェンジに専用で使われるボタンもある。

    1970年代頃までは、(17)ボールシューターの見当たらない機種では各ボール開始時にフリッパーボタンを押すとボールが打ち出されるものもある。

    近代以降ではほとんどの機種でフリッパーボタンが(30)フリッパーの操作以外のことでプレイに使用される。代表的な機能は(19)トップレーン(23)リターンレーン(24)アウトレーンでの表示灯(レーン以外にターゲットの表示灯が対象になる機種もあり)の状態を切り替えるレーンチェンジ(Lane Change)である。レーンチェンジの方向は左右それぞれの(16)フリッパーボタンで相反する方向に移す機種もあれば同じ機種もある。長押し状態で待ってプレイに必要な情報を(2)ディスプレイに表示させる機能は、ステータスリポート(Status Report)やインスタントインフォ(Instant Info)と呼ばれる(このとき逆側のフリッパーボタンでページをめくれる)。ルール上でプレイが止まって(2)ディスプレイに何かしらの選択肢が示された場合、その選択に用いる。ビデオモード(プレイ中のお遊びとしてのビデオゲーム)ではその操作に使う。左右両側を同時に押して(2)ディスプレイの説明表示などを省略するスキップ機能でプレイの進行を早められる。また各ボールの打ち出し時に左フリッパーボタンを押したままで(17)ボールシューターでボールを打ち出すことで通常とは異なる経路をボールが進む機種は意外に多い(ルール上ではスーパースキルショットのチャンスを作れる場合がある)。極めて特殊なものでは、ボールが(26)バンパーによって引き止められるのを防ぐために左右両側のフリッパーボタンを同時に押している間は(26)バンパーの動きを止める機種がある。そしてハイスコアを出したプレイ後にはハイスコアネームの文字選択に使う。なおプレイ前にフリッパーボタンを長押しするとディスプレイで秒読みが起こり、その間にゲームをスタートさせると簡易なコンペティションモード(無作為性のルールを、試合用に均一公平なものにする)でのプレイになる機種もある。

    同じく近代以降ではプレイ中以外でもフリッパーボタンが機能を持つようになっている。プレイをしていないときに(2)ディスプレイに様々な情報が順次示される機種が登場したのは1980年代半ばだったが、10年ほど経ってからそれら情報のページめくりをフリッパーボタンで行なえるようになった。左右両側のフリッパーボタンを同時に押すと直前のプレイ結果のスコアを示すこともされるようになったが、これは試合の際の需要に応えたものである。フリッパーボタンが押されたとき、ゲーム機が誘引のために何かしらの音声を出す機種も多い(何回か押した後はしばらく機能しない)。また運営者はメンテナンス用のテストモードなどの操作にも使う。(2)ディスプレイの項で触れたイースターエッグのコマンド入力用に使う機種もある。

    なお古くは1960年代頃、メーカーによっては左フリッパーボタンに通電機能を持たせていたことがある。これは主電源が入れられただけでは電球を点灯させない状態(言わば節電モード)にあり、左フリッパーボタンが押されると点灯させるという仕様である(これが知られていなくともコインが投入されれば節電モードから抜け出す)。

  • (17)ボールシューター / ball shooter

    (4)プレイフィールドにボールを打ち出す装置。

    多くの場合、(7)キャビネットの前面右上にあるロッド(rod=棒)を手で引いてバネの力で打ち出す仕組み。プランジャー(plunger=棒ピストン)とも呼ばれる。但しピンボールの部品名としては随所に用いられているコイルの中の鉄の心棒も全てプランジャーなので、厳密にはプランジャーと言うだけではボールシューターを示さない。打ち出し機構全体がボールシューターであって、その中の鉄の心棒がボールシュータープランジャーである。

    ロッドを引きつつ(46)シューターゲージを見ながら慎重にボールを放つという所作は、ルール上の重要性が低くなった近年の機種ではほぼ必要なくなってしまった。

    ロッドによるマニュアル(手動式)ボールシューターに対し、1990年代初頭頃にはオート(自動式)ボールシューターが標準化し始めた。これはコイルで作動するキッカーがボールを蹴り出すもので、そのためマルチボール用にロックしたときにプレイヤーがひと休みしようとしてもすぐに自動でボールが打ち出されるような忙しいプレイ展開が多くなった。オートボールシューターはマニュアルボールシューターに併用されるものとして近年でも定着している。しかしそこに至るまでの過渡期には、ロッドをなくしてしまってトリガー(trigger=引き金)やボタンを据えたオートボールシューターのみの機種も多々見られた。ちなみにそのトリガーやボタンがビデオモード(プレイ中のお遊びとしてのビデオゲーム)などの操作に用いられることも一時期は流行ったが、この機能は(10)モールディングバーで触れたアクションボタンに受け継がれるような流れとなった。

    逆に古い機種の中には右側手前にボールシューターが見当たらないものもあり、(10)モールディングバーに設けられているボタンや(16)フリッパーボタンを押すとボールが(32)アウトホールから直接上方の(4)プレイフィールドに打ち出される。これが野球やアメリカンフットボールがテーマのピンボールであれば、フィールドにボールを放つ雰囲気を作り出している。1970年代頃まではしばしば見られたこの機構はセンターボールシューター(center ball shooter)と呼ばれる。その中には1950年代にタレット(turret=砲塔)シューターというものを搭載した機種があるが、これはモーターによって首振りする砲台を用いて好みの角度でボールを打ち出すものである。

    通常とは逆側になる(7)キャビネットの前面左上にもう1つのボールシューターがあるものが存在する。プレイの途中にボールが(4)プレイフィールドの左端にあるもうひとつの(31)シューターレーンに送り込まれることがあり、この際にボールを打ち出すために用いる。

  • (18)コインリターン / coin return

    (5)コインドアの下方にある、コインが戻って来た場合の取出し口。

    メカの異状, コインの形状不良, 対象以外のコインが原因となって戻る。

    古い機種にはコインリターンが(5)コインドアそのものには取り付けられていないものもある。

  • (19)トップレーン / top lane

    (4)プレイフィールドの上段に設けられているレーン。

    ボールがレーン内のスイッチを踏むことで通過を判定する。

    このレーンが複数個並ぶ場合、ルール上はその全てを通すこと(=トップレーン完成)で特典を得られることが多い。また1970年代頃は奇数個のトップレーンのうちの真ん中を通すことが重要な機種が多く、ゲーム開始時点でその成否が局面を大きく左右した。

    1980年代に入ると、トップレーンの完成のためにレーンチェンジ(Lane Change)という画期的なルールが登場した。一般的にレーンにはその状況を示す表示灯があるが、ボールが通ると表示灯が消灯から点灯に替わる(逆に点灯から消灯に替わる機種もある)。例えば4つのレーンからなるトップレーンを完成するには4か所全てを通して表示灯を4つ点灯させなければならかなったのだが、レーンチェンジ機能では(16)フリッパーボタンによって表示灯の消灯点灯状態が隣のレーンに移される。つまりプレイヤーはボールが入りそうなレーンの表示灯を先回りして消灯にして準備しておくことが出来るようになった。これでトップレーン完成の難易度は下がったが、台を揺らして狙ったレーンにボール運ぶ「どつき技」や「ひねり技」などのプレイヤーの技術は退化した。しかしレーンチェンジを絡ませてまた新しい技術が必要になり、それまでとは違う種類の楽しみが増した。例えばトップレーンの下部地域にある(26)バンパーからの突き上げ逆流通過を予測して待ち伏せするなどがそれだ。のちにレーンチェンジ機能は(23)リターンレーン(24)アウトレーンにも及び、中にはトップレーンも含んで上へ下への大回りで表示灯の状態を切り替える機種もある。

    なおトップレーンは上から通すだけのものでもなく、(30)フリッパーで打ったボールで下から通すコースも見付かる。そしてそれを前提としてデザインされた機種もある。

  • (20)スピナー / spinner

    中央に横軸を持つ板状の装置で、下側を通過するボールが板の下部に当たるとクルクルと縦に回転する。

    クランクによって回転運動が上下動に変換されてスイッチを反応させるという優れもの。

    1回転毎に回転軸のクランクがスイッチを反応させるため、ボールの通過後もスピナーがそのまま回転し続けているうちはスイッチがオンとオフを断続させるのがこの機構の魅力的な特徴。プレイヤーは勢いのあるボールをスピナーに通すことで点数と共に爽快感を得られる。

    初期のスピナーのスイッチは(4)プレイフィールドの裏側に設けられたブレードスイッチだったが、のちにマイクロスイッチが表側に設けられるようになって飛躍的に調整がしやすくなった。このことは(37)ロールオーバーボタンの項目で触れるロールアンダーの機構でも同様に進歩した。

    別名にはスピニングターゲットやロールアンダーフラッグがある。

  • (21)ドロップターゲット / drop target

    ボールが当たると倒れる(実際は真下に引き込まれる)ターゲット。

    引き込まれたターゲットが(4)プレイフィールドの裏でスイッチを反応させる。ターゲットはルール上の条件に従ってコイルの作動によって再び立ち上げられる(=リセット)。この上下動があるので、プレイヤーにも観戦者にも視覚的に分かりやすい仕掛け。

    複数枚の組はバンク(bank=土手)としてまとめられ、例えば3枚組はスリーバンクドロップターゲット(3-bank drop targets)と呼ばれる(略してスリーバンク)。ルール上は全部倒すこと(=ドロップターゲット完成またはバンク完成)で特典を得られることが多い。ルールとしてインシーケンス(in sequence)となっている場合は端から順に倒すことが求められる。

    ソリッドステート機(集積回路や基板による制御式)ではドロップターゲット1枚につきスイッチが1つ備えられていれば充分で、これは1枚1枚が倒れたことをプログラムが記憶しているのでバンクの完成もプログラム上で認識出来るようになったからである。時代をさかのぼってエレメカ機(電気機械式)では、ドロップターゲット1枚1枚に「倒れる途中」の位置と「倒れ切った」位置にそれぞれ別個のスイッチが備わっている。後者のスイッチは複数枚のドロップターゲットの相互間で直列回路上に連なっており、この回路が閉じることでバンクの完成を認識することになる。この例のようにエレメカ機の時代に先人が機構や回路に様々な工夫を施してピンボールのルールを築き上げて来たことには改めて敬意を覚えるが、他方ソリッドステート機の導入がどれほど革命的だったかということもやはりこの例でうかがい知ることが出来る。

    なおソリッドステート機ではドロップターゲットをリセットするコイルだけでなく、倒してみせるためのノックダウン(knock down)コイルがドロップターゲット1枚1枚に設けられている機種もある。例えばボールが当たること以外でもドロップターゲットの倒れる動きがルール上に仕組まれている機種ではそんな動作を見ることが出来る。また前のボールで倒されたターゲットを記憶させておいて次のボールの開始時に状況を再現する(特に複数人がプレイしているときなど)機種もある。

  • (22)スタンダップターゲット / standup target

    (21)ドロップターゲットのように倒れることなく、ボールが当たっても立ったままのターゲット。

    省略して単に「ターゲット」と呼ばれることが多い。ボールが当たると押されたターゲットが背後でスイッチを反応させるが、当たり具合によっては見た目と異なってスイッチが反応しないことも起きやすい仕組み。1990年代後半からはモジュラー(modular=組み立てられた単体の)スタンダップターゲットというものも見られる。この方式ではスイッチはターゲットの背後にはなく下部にあり、ボールによって後方に押されたターゲット部が(4)プレイフィールドの裏側で支点を境に前方に動いてスイッチを反応させる。

    複数枚の組がある場合、ルール上は全部当てること(=ターゲット完成)で特典を得られることが多い。なおターゲットの組をバンクと呼ぶのはドロップターゲット(のうちの同時にリセットされる一群)についての場合のようだが、スタンダップターゲットでもその一群がモーターで上下動する場合にはドロッピングバンク(dropping bank)と呼ばれている。そうでない普通のスタンダップターゲットの組は、英語の意味的にバンクとは呼ばないようである。

    ちなみにスタンダップターゲットの一種にブルズアイ(bullseye=牛の眼, 中心部)ターゲットというものがあり、これはターゲット全体の反応と中心部の反応を区別する二重スイッチ構造のターゲットである。

  • (23)リターンレーン / return lane

    (4)プレイフィールドの下段左右で(24)アウトレーン(29)スリングショットの間に設けられ、ボールを(30)フリッパーに導くレーン。

    ボールがレーン内のスイッチを踏むことで通過を判定する。

    別名としてインレーン(inlane)やフリッパーレーン(flipper lane)やフリッパーリターンレーン(flipper return lane)とも呼ばれる。

    メーカーによって差が大きいが、リターンレーンは1960年代半ば過ぎに用いられ始めて1970年代前半頃から徐々に定着した。(4)プレイフィールドの下段の構造は様々な変遷を経て、近代では外側から(24)アウトレーン, リターンレーン,(29)スリングショットの順に並ぶのが一般的になっている。

    いくつかの機種においては、(29)スリングショットのすぐ外側が(24)アウトレーンとなっていて更に外側に配置されたレーンがボールを(30)フリッパーに導く構造もある。この場合のレーンは内側の(24)アウトレーンを横切ってボールが(30)フリッパーに向かうのでクロスオーバー(crossover=交差路)リターンレーンと呼ばれる。

    リターンレーンが左または右の同じ側に2つ並ぶ機種もある。外側のものはアウター(outer)リターンレーン、内側のものはインナー(inner)リターンレーンと呼ばれる。

    (16)フリッパーボタン及び(19)トップレーンの項で触れたレーンチェンジがリターンレーンでも働く機種は少なくない。リターンレーンと(24)アウトレーンの全て(ほとんどの場合は合わせて4レーン)をまとめてボトムレーン(bottom lanes)と呼ぶことがあり、特にそれらを全て通して完成させるルールがある場合はレーンチェンジが機能することが多い。

  • (24)アウトレーン / outlane

    (4)プレイフィールドの下段左右外側にあり、ボールを(32)アウトホールに導くレーン。

    ボールがレーン内のスイッチを踏むことで通過を判定する。

    アウトレーンに(25)キックバック(44)ボールリターンゲートのようなボール救済装置が備えられている機種もある。

    (4)プレイフィールドの中段くらいの外側にあるレーンが真下のアウトレーンに向けてそのままボールを叩き落とす構造になっている場合、そのレーンはドロップ(drop)レーンと呼ばれる。

    ちなみにボールが落ちる場所はドレイン(drain=排水溝)とも呼ばれるので、左/右アウトレーンにはレフト/ライトドレインという異名がある。そのことから、ボールが落ちやすいアウトレーンはパワー(power)ドレインとも呼ばれる。

    (23)リターンレーンのない頃の時代の機種にはアウトレーンが左でも右でも片側に2つある構造が見られ、これはデュアル(dual)アウトレーンと呼ばれる。

    (16)フリッパーボタン及び(19)トップレーンの項で触れたレーンチェンジがアウトレーンでも働く機種は少なくない。(23)リターンレーンとアウトレーンの全て(ほとんどの場合は合わせて4レーン)をまとめてボトムレーン(bottom lanes)と呼ぶことがあり、特にそれらを全て通して完成させるルールがある場合はレーンチェンジが機能することが多い。

  • (25)キックバック / kickback

    プレイヤー救済装置の1つで、左側の(24)アウトレーンに落ちたはずのボールを蹴り戻してくれる。

    ルール上で指定された条件において機能する。(24)アウトレーンのスイッチをボールが踏むことでキックバックのコイルが作動するが、ボールの速度の緩急に合わせられずにしばしばミスキックをしてしまうのはアナログである故に避けられない。

    ちなみにビデオゲームのピンボールでは右側の(24)アウトレーンにキックバックが設けられていることもあるらしいが、実機では(45)トローフがあるためにキックバックを稼動させるためのコイル等一式を取り付ける余地がないので右側へのキックバック設置が出来ない。

    なお左側の(24)アウトレーンにキックバックはないものの同等のルールを設け、落ちたボール(の代わりのボール)を(31)シューターレーンに復活させてオートの(17)ボールシューターに蹴り出させる機種もある。製造コスト的にはキックバックのコイルを1つ省くことが利点になる。またキックバックのミスキックがない分、確実なボール復活となるのはプレイヤーにとっても良いことだとも考えられる。

  • (26)バンパー / bumper

    キノコのような形状をしていて、周囲360度のどの方向から来たボールも検知する装置。

    1930年代後半に登場した当時のバンパーはまだボールを弾き返す機能を持たないことから、歴史を振り返ってみたときにパッシブ(passive=非活動的な)バンパーと分類される。これはボールが触れることによって何かしらの加点などはあっても、ボールに対して何か特別な反応を示すものではない。その一種であるマッシュルーム(mushroom=キノコ)バンパーという小型のものは1970年代ではまだよく見られる存在だった。

    1940年代末になるとボールを弾き返す機能を持つアクティブ(active=活動的な)バンパーが登場し、その後徐々に主流に替わって行く。ボールがバンパー底部にあるスカート(skirt)という部分に触れると、スカートの中心部裏側にある軸がスイッチを押し下げる。このスイッチが反応すると、バンパー上部にある金属のリングがコイルによって瞬時に下方に引かれる。こうしてボールは一瞬でそのリングと(4)プレイフィールドの面の間に挟みつけられて弾き飛ばされる、という仕組みである。様々あるピンボールの機構の中でも、これは一大発明と言えるのではないか。アクティブバンパーにはメーカーや時代の違いによって異なる名称でジェット(jet)バンパー, ポップ(pop)バンパー, サンパー(thumper)バンパー, ターボ(turbo)バンパーなどがあるが、基本的に同様な機能を持つ。なお1970年代にセガが日本国内で製造していた機種では、独自の機構と動きを持つバンパーが用いられていた。

    エレメカ機(電気機械式)のアクティブバンパーではスカート裏のスイッチはコイルを作動させるだけで、点数を入れるためのスイッチはまた別にある。そのスイッチは、リングが下方に引かれるその動きの中で二次的に押されて閉じる仕組みである。そのスイッチ反応がリレー等の回路の更なる連動によって点数を入れたり鉄琴を鳴らしたり電球を点けたりその他のルールを進行させたりする。なのでこちらのスイッチに不具合があると、バンパーがボールを弾くものの他には何も変化がないという症状が起きる。ソリッドステート機(集積回路や基板による制御式)ではスカート裏のスイッチが反応するだけでプログラムがコイルを動かすと共に他の必要な全てに指令を送るように大きく進歩していた。

    バンパー(アクティブバンパー)が複数個ある場合にその間でボールが素早く連続的にど突き回される様は、バンパーの形状とも併せて一般的にはピンボールの象徴的要素として認識されているようである。しかし近代以降でバンパーのない機種も稀ではあるが存在する。

    バンパーの上面を覆うものをバンパーキャップ(cap)と呼ぶが、形状はほとんどが平らな円形である(他に四角形や立体的なものなどあり)。1980年代頃のバンパーキャップには各機種ごとにキャラクターや文字の描かれたものが多い。しかしそのようになる前は機種ごとではなく、時代の特徴が表われるキャップを多くのメーカーが共通アイテムとして用いていた。1950年頃から15年ほどは、デイジー(daisy)キャップと呼ばれるタイプが主流だった。これは文字通りにデイジーの花のような形状(デイジーの中でも一重のマーガレット状ではなく、八重のヒナギク状)である。これと入れ替わるように1965年頃にサンバースト(sunburst)キャップと呼ばれるタイプが登場する。これは16個の二等辺三角形が鋭角の頂点を円の外周に向けて放射状に並ぶもので、ギラギラと燃え盛る太陽を表わすような紋様となっている。サンバーストキャップはその後15年ほど絶えることなく用いられていた。但しメーカーによっては同系統と言えるような異体紋様を用いるようになったところもある。他にもサンバーストではない独自路線のものでは例えばギアスタイル(gear style=歯車状)などがある。丁度この時期は1970年代に世界中で起きた第一次ピンボールブームに重なるため、サンバーストキャップ自体がピンボールのシンボルマークとして後世に残っている。ところがその象徴的な存在であるサンバーストが、1980年代に入って間もなく完全に姿を消してしまう。そして前述のように各機種ごとにキャラクターや文字の描かれたキャップが多用されるようになる。1980年頃はピンボール市場が大きく落ち込んだ時期であり、そこから脱却する試行錯誤のためなのか画一的なサンバーストを使い続けていた多くのメーカーもバンパーキャップを多種多様なものに変化させて行ったとも考えられる。

    近年にも、その時代を思わせるためにデイジーキャップを用いた機種サンバーストキャップを用いた機種がある。

    キャップの色彩に関して、デイジーには赤, 青, 黄色, 緑などが多く使われている(中央部が白いものも多い)。サンバースト系は基調が白で紋様が赤, 青, 黄色, 緑など。それ以降は有色透明や無色透明で刻み模様が施されている(内部からの光を乱反射させる)ものが見られるようになった。透明なキャップに施される刻み模様の一種で、円の中心から等角度の放射状に20本ほどの線が延びている(半径の半分程度の長さ)ものはスターバースト(starburst)と呼ばれる。ちなみにスターバーストはバンパーキャップだけでなく、(4)プレイフィールドの項で触れているプレイフィールドインサートなどの透明プラスチック部品にも用いられる模様である。そして近年のバンパーキャップは傾向をまとめにくいほどに様々であるが、機種それぞれで工夫がされている。しかしながらバンパーはゲームのルールの中でかつての主役級から端役に追いやられてしまったようであり、残念ながら存在自体の印象が薄くなっていることは否めない。

  • (27)ランプレーン / ramp lane

    立体交差レーン。

    高さの異なる位置間をボールが移動する通り道は、どんなに短くてもランプと呼ばれる。段差間に置かれたスロープもあれば、地下を移動する抜け道もある。

    近代ではランプと言えばランプレーンを指すことがほとんどであり、材質から金属製のワイヤー(wire)ランプレーンと樹脂製のプラスチック(plastic)ランプレーンに大別される。ランプレーンの通過判定は、上り坂から峠を越えて下り坂に入った位置にあるスイッチがで検知するのが一般的である。また入口すぐの位置でも別用途のスイッチが検知していることが多く、これは入口が複数あって出口が共通のランプレーンではボールの経路判定のために不可欠である。この入口のスイッチは効果音を出すための存在としても見逃せない。

    ランプレーンを上り切れずに途中から戻って来たボールが左右の(30)フリッパーの間に落ちることは少なくないが、ある範囲の位置から転がって来るボールがそのようになるのは当然である。技術的にはそこで上手く揺らして対応することも出来る。しかし一般プレイヤーのためを考えた親切設計の機種では戻って来たボールをランプレーン入口のゲートで安全なコースに導いたり、戻る途中のボールをランプレーンから落とすなどの工夫で構造的に解消している。

    近代以降の機種ではランプレーンの形状と配置がデザインにおいてもプレイにおいても重要な地位を占めている。

  • (28)キックアウトホール / kick-out hole

    ボールが入ると軽く蹴り出す、丸い穴。

    ホール内のスイッチをボールが踏むことでボールが入ったことを検知し、加点等の処理ののちにコイルがキッカーを作動させて蹴り出す。蹴り出す方向は多くのものでは一定方向だが、異なる二方向に蹴り出すもの(2-way kick-out hole)もある。

    ホールの直径はボール1個分よりいくらか大きいだけ。イジェクト(eject=排出する)ホールとも呼ばれる。入ったボールはプレイヤーの視界から姿を消すことなく(4)プレイフィールドの表面の高さから蹴り戻される。

    ホールと同じように用いられる名称にソーサー(saucer=受け皿)がある。その名の通りにソーサーはお皿状のくぼみで、ボールよりもかなり大きな直径を持つ全体の中央部にキックアウトホールがある(一式まとめてキックアウトソーサーとも呼ばれる)。ボールは不意に吸い込まれたり、逆にクルっと回されて収まりにくかったりと悩ましい動きをすることが多い。そのような一喜一憂こそ、ボールを使ったアナログゲームの面白味の原点と言えよう。なおお皿状とも言えない小さなものでもソーサーという名称になっている場合があり、ホールとソーサーの呼び方は曖昧になっているところもあるようだ。

    元々ピンボールが始まった1930年代頃のホールは 、入ったボールがその場に留まったまま終了となるものが普通だった。これはトラップ(trap)ホールという名称で分類される。留まったボールは、次のゲーム開始時にリセットされた。他には、入ったボールが深く消え落ちるガブル(gobble=食い尽くす)ホールというものもあった。トラップホールは1950年代初頭までは普通のものであった。またガブルホールは1960年代前半までは存在していたが、流石にこの時代まで来るとホールにボールが入った時点で高得点と引き換えにそのボールが終了というのはゲーム性としては問題視されたかも知れない。

    トラップホールもガブルホールもボールに動きを与える力は重力だったが、1930年代半ばには乾電池を用いた仕掛けでホールに入ったボールを再び動かす機種もある。ホールに入ったボールに電力による動きを加える機種はその後も開発されて行ったが、その結果として強力な電磁力で動作するコイルがボールを蹴り出すキックアウトホールは正に技術革新だったことになる。今日のピンボールでは特に何とも思わないほどに普通のことではあるが、その昔のプレイヤーには大きな驚きだったことが想像出来る。

    なお1980年代末頃からはボールを垂直に力強く蹴り上げる機構のVUK(vertical up kicker=垂直蹴り上げ器)がホールに多用されるようになる。またホールの後方にスクープ(scoop=すくい上げ)というカーブした金属板があるものではボールが入るときは受け止め、出るときは前方に向かわせる。そしてホールに入ったボールが地下の(27)ランプレーンを経由して他から出て来る場合、この入口をセラー(cellar=地下室)ホールと呼ぶ。

  • (29)スリングショット / slingshot

    近代以降では(30)フリッパーの位置の外側上方に据えられているほぼ三角形型の障害物。

    名称に詳しくなければ「あの三角の弾くやつ」と言えば通じる。

    1950年代後半頃からの標準的機種に見られるようになり、定着した。

    反応面に張られているラバーリング(rubber ring)がボールに押されてその内側にあるスイッチを反応させると、コイルによって動作するキッカーがラバーリングもろともボールを瞬時に強く蹴り返して弾き飛ばす仕組み。反応面内側のスイッチは2つ設けられている(並列回路)ことがほとんどで、これによって幅広い範囲でボールを検知することが出来る。またキッカーが中央に位置するためにもスイッチがその両脇にあるのは必然か。なお1970年代にセガが日本国内で製造していた初期の機種では、ラバーリングを使わない独自の機構と動きを持つスリングショット相当のキッカーが用いられていた。

    エレメカ機(電気機械式)でのスリングショットのスイッチは、(26)バンパーと同じようにコイルの動作とその他の進行が二段構えになっていた。これもやはりソリッドステート機(集積回路や基板による制御式)では改善された。

    スリングショットに関してはソリッドステート機で他にも大きく進歩した事柄がある。スリングショットの一連の動作の中にはラバーリングが絡んでいるが、キッカーによってボールと共に蹴られたラバーリングは戻りの勢いで再び内側にあるスイッチを反応させてしまうことがある。ラバーの張り具合によってはそれが二度三度どころか延々と続いてしまうことにもなる。ボールがそこに当たった訳でもないのにスリングショットがタカタカタカタカと素早く動き続ける症状は整備不良の典型的な例で、通称「マシンガン」と呼ばれる。予防のためにはラバーの張り具合及びスイッチの接点の開き具合を点検することが必要である。「マシンガン」が起きると点数が入り続けるためにスコアも乱れるが、それ以上に良くないのはコイルが焼けてしまうことだ。初期のソリッドステート機でもこの症状は起きたが、のちになるとプログラム上でこの異状が認識されたときにはスリングショットを止める指令を出すように改善された。この他にもスリングショットのスイッチの接点が近過ぎると良くないことがあり、(30)フリッパーの動作に伴う衝撃ですぐ近くにあるスリングショットのスイッチが反応してしまう症状が発生する。これによって点数が入ることだけでなく、ボールが(31)シューターレーンにあるうちにはルール上でプレイに不都合が起きることもある。この件についてものちのちのソリッドステート機の中には改善(例えば、スリングショットで点数が入ってもスキルショットの機会は失わせない)の見られる機種がある。

    左右のスリングショットによって往復ビンタのように横方向に振られたボールは(24)アウトレーンに落ちることが多く、プレイヤーからすればスリングショットは最も恐ろしい機構と言えそうである。但し古い機種ではスリングショットが(30)フリッパーの近辺ではないところに設けられていることがあり、この場合はプレイヤーがボールを目標物に運ぶための味方になってくれるときもある。また近年の機種で(26)バンパーを置く地域において省スペースのスリングショットが代用されているものがある。

    なお形状や設置位置が近代以降の標準的なスリングショットと同様であっても、コイルの動作による弾き返し機能を持たないものも存在する。この場合、これはリバウンド(rebound=跳ね返り)の一種と言える。リバウンドとは(4)プレイフィールドのあちこちでラバーリングに囲われた障害物のことで、内側にスイッチがあるかないかで点数が入るものも入らないものもある(意外に近年でも10点の入るスイッチ付きのリバウンドが地味な位置にひっそりと仕込まれている機種あり)。逆に開発の歴史を考えれば、リバウンドにスイッチとキッカーを仕込んだものがスリングショットと呼ばれるようになったと言える。

  • (30)フリッパー / flipper

    野球のバットのように、ボールを打ち返すもの。

    (16)フリッパーボタンを押してボタン部のスイッチを反応させて動かすことを可能にした、プレイヤーの意思で操作出来るパーツ。(16)フリッパーボタンを押したままにすればフリッパーを上げたままの状態(ホールド)に保つことが出来るが、1950年前後にはインパルス(impulse)フリッパーと分類されるホールド機能のないものを持つ機種もいくらかある。ちなみに近代にはホールドが数秒間続けられるとそのボールが強制終了となるユニークな機種もある。

    1930年代初頭には手動による機構としての元祖フリッパーが既に登場していたようだが、電気仕掛けの新機構であるフリッパーが登場したのは1947年である。当初は短めのものが数か所に点在している状況であり、「フリッパーバンパー」と呼ばれていたことからも「プレイヤーの意思で動かせる(26)バンパーの一種」程度の存在であったと解釈出来る。実際のところ確かに「ただボールが落ちるに任せるよりは少し長く遊べる」くらいにしか感じられないものである。

    1940年代末頃には(4)プレイフィールドの下端中央部に左右1対のフリッパーが設けられるようになった。しかしフリッパーの軸の位置は近代機種の仕様から見れば真逆だった。それはフリッパーの動きの支点が外側になく中央寄り(右フリッパーでは軸が左側)にあるもので、左右1対のフリッパーがカタカナの「ハ」の字のような配置でパタパタと羽ばたくように動くというものである。機種によっては(16)フリッパーボタンの左右に関係なくどちらを押しても左右両方のフリッパーが同時に動く仕様のものもある。しかし左右フリッパーの先端による連携テクニックが生まれる前の時代なのでプレイには特に支障はなかったはずである。常にダブルフリップ(左右同時打ち)になるなどということは、フリッパーテクニックの発達していない時代だからこそ許された仕様である。

    そんな「ハの字」型で始まったようなフリッパーだが、1950年には軸の位置を外側に持って来た機種が現われる。これは野球で右打者と左打者が左右のバッターボックスに同時に立っているような状態であり、今では普通のことである。しかしこの「左右両打者」型はその時点では高い評価は得られていなかったようである。何故ならばそれから5年ほど経った1950年代半ば過ぎまではまだ「ハの字」型の機種が存在していたからである。1950年代半ばまでの「左右両打者」型の機種には左右フリッパーの間が広い(ボール5個分やそれ以上も)ものが多く、それだけ離れた左右のフリッパーでは先端を使った連携テクニックは生まれようもなかったのだ。つまり「左右両打者」型の機種をプレイしてもプレイヤーには特別な達成感がある訳でもなかったので、人気が出ることもなかったのだろう。このことは「ハの字」型の機種でも「左右両打者」型の機種でもその他の部分では(4)プレイフィールドのデザインを見比べたときに大きな差が感じられないことからも言えそうで、フリッパーの配置にほとんど関係なくプレイが展開されていたことが想像出来る。

    1950年代末までには、「左右両打者」型はすっかり標準となっている。但し左右フリッパーの間の広さは機種によってまちまちで、ボール2個分や3個分のものも少なくない。しかしただ広く開けておくのではなく、左右フリッパーの間にレーンなどを配置する機種が多く見られる。それが1960年代を経て徐々にどのメーカーもどのデザイナーもプレイヤーをより楽しませるために左右フリッパーの間をある程度狭めることを見出して行ったようである。そして1970年代に向かう頃には、この「ほど良い間隔」を持つ左右フリッパーを操作することでプレイヤーの技術も著しく進化したに違いない。ボールがすぐには落ちずに何度も何度も打ち返されるようになるとプレイタイムもいくらか長くなり、ゲームのルールも発達する。そしてフリッパーの定着に伴って例えば(21)ドロップターゲットのような下方から打ち戻されるボールに応じる様々な目標物も増して行く。このようなメーカー側とプレイヤー側との工夫や進歩の相乗効果でピンボールが黄金時代を迎えるのが正に1970年代である。「運だけではなく技術による、スポーツと言えるゲーム」という認識が広まったことで、それまでピンボールをギャンブル機とみなしていたアメリカのいくつかの州の法律も1970年代後半に変わって行った。それは1970年代に日本でピンボールが盛んになった時期よりあとのことである。

    フリッパーの登場からその配置の変遷に呼応して、ピンボールのゲーム性は革命的に変わって行った。他方では同様な起源から枝分かれしたビンゴマシンという「フリッパーのない」遊戯機も存在する。そのこともあって「フリッパー」という名詞は本項目で述べて来たパーツのことだけでなく、象徴として「(フリッパーを備えている)ピンボールゲーム機そのもの」を指すことがある。

    ところで1950年代後半には変わり種のプッシュアップ(push-up)フリッパーを採用した機種がある。これはフリッパーの軸が、回転せずにフリッパーごと前方に押し出す機構である。フリッパーではないが類似の珍種として1950年代前半には(16)フリッパーボタン(のようなボタン)を押すと(4)プレイフィールドの下端で6つの(41)ポストがボールを弾くために跳ね上がる機構(pop-up post)も見られる。

    1960年代以降のフリッパーの配置は(4)プレイフィールドの下端中央部に左右1対がほぼ基本となっている(もちろん例外はある)。特に近代以降では3つ目のフリッパー(サードフリッパー=third flipper)が(4)プレイフィールドの中段に配置されて極めて有効に活かされた機種も多い。そのような3つもしくはそれ以上のフリッパーを持つ機種は数え切れないほどあり、基本から外れるようなものも含めて様々な配置がデザインされて来た。

    1970年前後の機種にはジッパー(zipper)フリッパーという機構が見られ、これは左右のフリッパーが軸ごと中央に寄ってボールを落ちにくくする。

    フリッパーの長さには基本としてショート(2インチ=約5cm)とロング(3インチ=約7.5cm)がある。更に長いものとしてはジャンボフリッパー(5インチ=約12.5cm)というものもあり、また曲がったものでバナナフリッパーというものもある。1970年前後からはロングフリッパーが標準的と言えるが、近代の機種にもメイン(下端中央の左右1対)ではない位置にショートフリッパーを用いているものがある。またあえて古い時代の再現を意図した機種が近年に試みられ、ショートフリッパーが用いられた。

    プレイヤーが(16)フリッパーボタンで操作する以外に、ルール上で自動的に作動するフリッパー(game-controlled flipper)を持つものが1990年代に数機種ある。

    1990年代にスイッチフリッパー(switch-flippers)という新機構が搭載された対戦型(head-to-head play)の機種がある。これは「フリッパーにボールが触れたことを検知するスイッチ」を備えたもので、対戦ではなく独りで遊ぶ際に相手方になるフリッパーが自動的にボールを打ち返して来る斬新な仕組みだった。実は2人が対戦で遊ぶときには「プレイの最後にボールに触れたフリッパー側のプレイヤーに特別な点数を与える」ために機能することにもなっていた。

    フリッパーを巧みに操作することが出来るようになると、際どいボールを鮮やかに拾ったり狙ったところにボールを打ち込んだりすることも可能となる。そのようなテクニックはピンボールがスポーツであることを示す大きな要素と言える。

  • (31)シューターレーン / shooter lane

    ボールが(4)プレイフィールドに打ち出される際に通過するレーン。

    近代以降の機種ではシューターレーンにボールがあることを認識するためにレーンの最下端にスイッチがあるが、古い機種にはないことが普通だった。

    ほとんどの機種のシューターレーンは(4)プレイフィールドの右端を真っ直ぐ上に向かい、最後に左カーブを描きながらボールを放つようになっている。他にはその途中で(4)プレイフィールドを中段から斜め左上に横切ってボールが飛び出すようなシューターレーンも例は多い。

    各ボールを開始するためにシューターレーンにボールを送り出すことは、黎明期の1930年代からプレイヤーが自ら手動で行なうのが普通のことだった。そのために(17)ボールシューターと同様なロッドが別個に備えられていた。そののち1960年代半ばに、ボールが自動で送り出される機構が開発された。

    ちなみに(17)ボールシューターの項目で触れたように、例外としてシューターレーンが存在せずに(32)アウトホールから上方にボールが打ち出される機種もある。

  • (32)アウトホール / outhole

    (4)プレイフィールドから退場したボールが向かうホール。

    1930年代から1950年代半ば頃までの多くの機種では、(4)プレイフィールドの下端に横長のアウトホールが露出されている様子が見られる。これはプレイの終わったボールの個数がそのまま分かりやすく横並びになって収まる場所だった。のちにアウトホールはボール1個分の円形になったが、変遷の中で1950年代後半からの1人用通常機種ではアウトホールに落ちたボールは(12)ボトムアーチにある覗き窓から見えるように並べられて "BALLS PLAYED" (プレイの終わったボール)という表記も添えられた。アウトホールの先にあるこのボール収納部は可視状態の(45)トローフと言える。そうでない機種ではアウトホールに落ちたボールはプレイヤーには見えなくなったが、実際は(28)キックアウトホールの項で触れたトラップホールやガブルホールからのボールと合わせて地下部分の(45)トローフに流れ込んでいた。やがてアウトホールにはボールを検知するスイッチが設けられるようになり、アウトホールボーナスの加算やアウトホールからボールを蹴り出すキッカーの作動に用いられるようになる。

    1990年代前半頃からは再びアウトホールからはスイッチとキッカーがなくなり、ボールはそのまま右側に深く転がり落ちて(45)トローフに収納される方式が主流になった。

    前項で触れたように(31)シューターレーンのない例外的機種を除けば、ボールはアウトホールから右側に向かって(31)シューターレーンに現われるか途中の(45)トローフに収納されるのが近代以降では標準的である。ところが近代以前では国や地域における法的な諸事情等に関連し、アウトホールから蹴り出す先を(4)プレイフィールド(上向き)か(31)シューターレーン(右向き)かに切り替えられる機種が1960年代半ば頃から1970年代半ば頃に見られる。イタリアではプレイ出来るボールの回数を所定数より多くすることが禁じられていたようで、プレイヤーには(3)ディスプレイの項で示したエキストラボールもアドアボールも与えることが認められなかったらしい。そこでボールが再び(31)シューターレーンに表われる替わりに(4)プレイフィールドに蹴り戻されてプレイが続けられるルールが必要となった。メーカーによって機構は様々のようだが、用語としてはアウトホールキックアップ(kick-up)というものが見られる。中には(12)ボトムアーチに小窓を開けてそのような仕組みの一部を見せている機種もある。

    ちなみに(24)アウトレーンと同様に、アウトホールにはセンタードレイン(center drain)という異名がある。

  • (33)アーチリバウンド / arch rebound (またはバッファー / buffer)

    (31)シューターレーンから出て来たボールの衝撃を受け止める緩衝器。

    1980年頃までの多くの機種では(17)ボールシューターによって放たれたボールは(12)ボトムアーチの項で触れたトップアーチに沿う。そしてアーチリバウンドにぶつかって戻り、(31)シューターレーンの出口の(40)ワンウエイゲートに跳ね返され(文字通りの門前払い)て2往復くらいすることがある。

    そのような機種において(4)プレイフィールドの上段地域の(19)トップレーンなどに重要な狙い目があれば、手動式の(17)ボールシューターでボールを打ち出すときにはその行き先をしっかり意識する必要がある。打ち出されたボールが上述のように左右を行き来する際、プレイヤーはボールが弾むタイミングに合わせてマシンを軽く揺らしてボールをコントロールする。

    一方、アーチリバウンドに触れさせることもなく(17)ボールシューターの打ち出し加減だけで狙ったところにボールをすっぽりと収めるのも別のテクニックである。

  • (34)オービット / orbit

    長い(35)フラットレールがカーブを作って壁になり、ボールを滑らかに導くレーンのこと(オービット=軌道)。

    オービットの経路に設けられたスイッチがボールを検知して通過を認識する。スイッチは複数あることがあり、それによってボールの通った方向が判断される。また高速で通過するボールをスイッチが検知しにくい構造の場合、複数のスイッチが予備として補完し合うものもある。

    オービットが(4)プレイフィールドの左右両側に設けられていて一方から入ったボールが連続的に素早く他方から抜け出て来るような構造をループ(loop)と呼ぶことがある。またループが小振りで半円形に近い形の場合にはホースシュー(horseshoe=馬の蹄鉄)と呼ばれる。しかし大きいものでもホースシューと呼ばれる場合もあってこの呼び名の区別の定義は分かりにくい。

  • (35)フラットレール / flat rail

    平らな金属板で作られた、ボールを誘導するための壁。

    高さはボールの直径とほぼ同じ。カーブした長いフラットレールは(34)オービットを形作る。細かいデザインのために短いフラットレールが随所に存在するものもあり、経路を形作るために折り曲げられたりもする。

    (12)ボトムアーチに覆われている部分だが、(32)アウトホールから(45)トローフにつながる壁にもフラットレールが用いられることがある。

  • (36)ディバーター / diverter

    分岐点の切替器。

    ボールの行き先が複数あるとき、分岐点にてボールを振り分ける装置。例えばカギ爪状のものが(27)ランプレーンの途中に用いられ、首振りや上下動などによってボールを振り分ける。ほとんどの場合の作動はコイルによるもので、中にはプレイヤーが操作出来るものもある。 動力制御のないものでは、来たボールを単純に左右交互に振り分けるものなどがある。また磁力によってボールをキャッチして行き先を変更するものもある。

    (27)ランプレーンの入口スロープ状のものが上下に開閉することによってボールを上らせるか素通りさせるかを分けるディバーターも少なくない。

    レーンを含んだいくらか大きな部分を丸ごと反転させたり回転させたりしてボールの行き先を振り分ける大仕掛けはディバーターの大親分と言える。

    左右の(34)オービットがそのまま突き抜けてループになっている構造の途中で、ボールを(19)トップレーンなどに導くように出現する上下動式の(41)ポストもディバーターとして働く。同様な働きを磁力で行なうこともあり、これも同じように考えられる。

    なお後述の(44)ボールリターンゲートもディバーターの一種になる。

  • (37)ロールオーバーボタン / rollover button

    ボタン形状でボールに上から踏まれる形式のスイッチ。

    ロールオーバーとはボールが上を通過すると反応する形式のスイッチのことで、(19)トップレーン(23)リターンレーン(24)アウトレーンのほぼ全てがそうである。その1つであるロールオーバーボタンは、周囲360度どの方向から来たボールも検知出来る小さな円形のものである。ボタンはボールに踏まれて押し下げられて(4)プレイフィールドの裏でスイッチを反応させる。同じ仕組みのものでも、その形状からロールオーバースター(star)と呼ばれるものもある(日本での俗称はタコノマクラ)。また錠剤並みに極小のロールオーバーボタンもあり、ホールの周囲に配置するなどの使われ方がされる。

    デザイン上、ロールオーバーボタンはレーンに依存せずに置くことも可能なので(4)プレイフィールドへの配置の自由度は高い。1970年代から1980年代半ばまでは珍しいものではなかったが、その後はほとんど使われなくなっている。

    ちなみに(23)リターンレーンのようなレーンはほぼボール1個分の幅なのでその中央にロールオーバー形式のスイッチを置くが、幅の広いレーンでそうするとボールの確実な検知は難しい。そのため、ロールアンダー(rollunder)という形式のスイッチが用いられる。レーンをまたぐように設けたゲートの下をボールが通過する際にゲートが上方に押されると、それに連動するスイッチがボールを検知する。近年の機種では(27)ランプレーンの入口及び通過部にこの形式のスイッチを設けることが多い。(20)スピナーも一種のロールアンダーであり、ロールアンダーフラッグ(rollunder flag)という別名でも呼ばれた。

  • (38)ボールガイド / ball guide

    ボールの通り道を形作るもの。

    広い意味でボールを導くものを指すので、(35)フラットレール(43)ワイヤーフォームも含まれる。中でも特にボールを(23)リターンレーンから(30)フリッパーに滑らかに導くものをボールガイドと呼ぶことがあり、より明確に示すにはボールリターンガイドという名称が使われる。

  • (39)アップポスト / up post

    プレイヤー救済装置の1つで、左右の(30)フリッパーの間を塞ぐように下からポコッと現われてボールを落ちにくくする円柱状のもの。

    ルール上で指定されたある条件を満たすと現われ、プレイヤーを有利にする。また逆にある条件において下がり、元通りになる。アップポストの出現中は(16)フリッパーボタンから手を放してもボールが落ちない状況を作れるため、プレイヤーは一休みすることも出来る。

    センター(center)ポストと呼ばれることもあるが、どちらかと言えばセンターポストとは左右の(30)フリッパーの間のやや下方に設けられたラバーリング(rubber ring)付きの小さな(41)ポストを指すことの方が多いと思われる。そこで言うセンターポストは左右の(30)フリッパーの間を塞ぐものではなく、真ん中に落ちそうなボールが当たったときに大きく跳ね返れば救済される程度のものである。

    ボールセーバー(ball saver)という別称もある。左右の(30)フリッパーの間を塞ぐものとしては1950年代初めに見られる「逆V字型」(あるいは「V字型」)のものが先行して存在し、ボールセーバーやセーフティーゲート(safety gate)やブロッキングゲート(blocking gate)と呼ばれている。これがのちの1960年代に進化してアップポストとなり、その形状は丸型(円柱状)に限定された。

    ちなみに同等な救済効果を持つものに(30)フリッパーの軸がそれぞれ左からも右からも中央寄りに移動して間を閉じるジッパー(zipper)フリッパーという機構があり、1970年前後の機種に見られる。

  • (40)ワンウエイゲート / one way gate

    (31)シューターレーンなどの出口でボールを一方通行に制限するゲート。

    (34)オービットの出口に設けられることもある。なおループを作っている左右の(34)オービットの出口にあるワンウエイゲートは特別な機能を持っており、ボールをループのコースに進ませるときに一方通行を解除してどちらの方向にも通り抜けられるようにする。このように状況によってはボールを門前払いにせず、ゲートを開いて通過させるワンウエイゲートをコントロール(control)ゲートという(開閉動作は微力のコイルが行なう)。

  • (41)ポスト / post

    棒状またはそれに近い形状をした障害物。

    材質は金属やプラスチックだが、プラスチック製のものでも芯となるのは金属のネジ。ポストにはラバーリング(rubber ring)が加わる場合が多く、それは単体に指輪のようにはめられたり複数に掛かって陣取りのように張られたりする。何れもラバーの高さは(4)プレイフィールドの表面からボールの半径程離れて位置しており、頻繁にボールとこすれ合う。またチューブ状の硬質ラバーが円柱状の金属ポストをすっぽり覆っているものもある。

    障害物と呼ぶのは不相応かも知れず、様々な役割がある。比較的細めの金属円柱に小さなラバーリングの付いたミニポストは、(23)リターンレーン(24)アウトレーンの境目にあればボールを落ちにくくする。同じくこれが左右の(30)フリッパーの間にあれば、(39)アップポストの項で触れたセンターポストとしてプレイヤーを救済する。

    赤や青や黄色などの透明プラスチック製で細やかな刻みが施されたジュエル(jewel=宝石)ポストは、光を帯びて見た目も華やかにしてくれる。

    例えば(29)スリングショットの三角形を形作るなど、レイアウトの基礎として多種多様な数多くのポストが(4)プレイフィールドに打ち込まれている。

    (27)ランプレーンの入口の脇などでは、傷みやすい部分の破損を防ぐための犠牲として立ち塞がっているポストが多い。特に近年の機種には(30)フリッパーの力の強いものが多く、このような殴られ役のポストは激しく傷む。

  • (42)キャプティブボール / captive ball

    限られた区域に閉じ込められていて、ターゲットの1種となるボール。

    普通のプレイに使われるものと同じボールが用いられることがほとんどで、材質と大きさは鋼鉄で直径1と1/16インチ(約2.7cm)。ちなみに1930年代のピンボールには樹脂製やガラス製のボールも用いられていた。鋼鉄製のボールに対してはプレイヤーが磁石を持って来て高得点のホールに誘導するなどの悪さをすることもあったそうで、メーカー側がボールの材質を磁力に反応しない金属に変更するようなせめぎ合いもあったという。

    キャプティブボールはプレイ中のボールが当たることで弾き飛ばされ、その区域内の移動の程度を奥の(22)スタンダップターゲットや途中のレーンのスイッチが判定する。キャプティブボールに鋭く的確に当てて完全弾性衝突を起こした場合、中のボールが飛ばされて外から当たった方のボールが一瞬その場で止まるところなどは如何にもアナログで美しい。

    多くの場合は短いレーンの中を直線的に往復するものだが、そうではないキャプティブボールもある。例えば「逆U字型」につながって並ぶ2つのレーンに5個のキャプティブボールが仕込まれていて、片側に全5個を寄せると特典が得られるという機種もある。ここでは残り1個になった側に正確に強く当てないとそのうち逆側に緩いボールが当たってしまって下から4番目のボールを1個の側に簡単に戻す結果になることが多くあり、悔しい思いをさせるところが物理的な仕掛けとして非常に優れている。またキャプティブボールが、(26)バンパーも据えられているいくらか広い範囲の中で動き回る機種もある。この場合はプレイ中のボールが(32)アウトホールに落ちてもなおキャプティブボールが(26)バンパーに弾かれながら得点を伸ばすという展開がしばしば起こるのが面白い。

    キャプティブボールはその限られた区域からは決して出て来ないものだが、風変わりな例外もある。特殊な機構を持つ機種ではマルチボール用にロックされたボールがキャプティブボールの役割を兼ねており、強く当てられるとそのボールが弾き出されて臨時的なマルチボールになる。

    ところでしばしば見受けられる事故なのだが、新機種導入時に店舗側が勘違いでキャプティブボールをご丁寧に取り除いてしまうことがある。もちろんプレイの進行に支障が出る。更に悪いことにそのボールがプレイ用のボールに加えられて(45)トローフの中に仕込まれてしまうと、100%間違いなく不具合が発生する。但しそこまでピンボールに関心を持って手間の掛かる作業をしたことに関しては、積極的で良いことだとも言えよう。

    なお別名にはメッセンジャー(messenger=伝達者)ボールやボールターゲットがある。ちなみにキャプティブボールという呼び名を、マルチボール用にロックされて留まっているボールに対して用いた機種もある。加えてこのような機種に本項で述べて来た「ターゲットとしてのキャプティブボール」もある場合、それはパーマネント(permanent=恒久的な)キャプティブボールという名称で区別されていた。またキャプティブボールスピナーというやや分かりにくい名称が存在するが、これは(4)プレイフィールドに埋め込まれたルーレット盤のような仕掛けのことを指す。

  • (43)ワイアーフォーム / wireform

    硬い太めの針金のような素材を整形したもの。

    上記の素材が様々な形に整形された部品はどれもワイアーフォームと呼ばれる。そのうちの1つとしてまず挙げられるのは、図示してあるように(38)ボールガイドの一種となるワイアーフォームボールガイドである。これは「コの字型」(真上から見て折れ曲がっていたりカーブしたりしているものなどもある)になったものの両端を(4)プレイフィールドに埋め込むことで、レーンを形作ってレイアウトの基礎作りに用いられる。(35)フラットレールが多用されるようになる前の時代ではこのようなワイアーフォームによるレーンが多く見られる機種がある。近年でも(23)リターンレーン(24)アウトレーンを仕切るような狭いところでは変わらず使用されている。

    また同じコの字型で両端を埋め込むものでも、ラバーリング(rubber ring)の内側などで電球や(21)ドロップターゲットを保護する役割を持つものもある。これらはリバウンド(rebound=跳ね返り)用ワイアーフォームと呼ばれる。

    1970年代前半頃からは(30)フリッパーの手前部分(プレイヤー側)に沿うように(4)プレイフィールドの表面ギリギリまで打ち込まれているワイアーフォームが見られる。これはボールを減速させるためのもので、バッファー(buffer=緩衝)ワイアーやスナバー(snubber=冷遇)ワイアーやアンチリバウンド(anti rebound=跳ね返り防止)など様々な呼び名が見受けられる(これといった的確な名称がないかのように)。1990年代半ば頃からこのワイアーフォームはほぼ見られなくなった。

    (40)ワンウエイゲートでボールが触れると上方に開く部分も部品としてはワイアーフォームになる。似たようなもので(37)ロールオーバーボタンの項で触れたロールアンダー形式のスイッチを持つゲートにおいて、ボールが触れると上方に開いてスイッチを反応させる部分もワイアーフォームである。これらはボールゲート(ball gate)ワイアーフォームなどと呼ばれ、「コの字型」や「W字型」の他に様々複雑な形状がある。

  • (44)ボールリターンゲート / ball return gate

    プレイヤー救済装置の1つで、右側の(24)アウトレーンに落ちたはずのボールをプレイ続行可能としてくれる首振り開閉式のゲート。

    まず最初に、日本ではボールリターンゲートという名称が使われることはほとんどないと思われる。実際のところオープンゲートという呼び名が定着している様子であり、その方が圧倒的に通じやすいはずである。これはその昔(4)プレイフィールドに記された「ルール表記」に "OPEN GATE" の文字が見られる機種があったことから、それを日本人としては開閉ゲート部の「名称」として用いるようになったと考えられる。英語では "ball return gate" の他には "detour(ディトゥア=回り道) gate" という呼び名がある。

    例外はあるがほとんどの機種においてゲートはルール上で指定されたある条件を満たすと開きっ放しになり、ボールがそこを通る(落ちずに救済される)と閉じて元通りになる。

    ゲートの動きについてその向きを時計の針で例えると、閉じている状態というのは12時の方向を向いていることである。そして機種ごとのデザインによってこのゲートの置き方は2種類に分けられる。それは(23)リターンレーン(24)アウトレーン(31)シューターレーンとにどう絡むかという違いである。
     <注>当サイトの図示にある番号(23)と(24)は(4)プレイフィールドの左側部分を指しているが、当項目でのボールリターンゲートの説明に関しては右側部分について述べている

    まずゲートの支点が(23)リターンレーン(24)アウトレーンの間にある機種では、開いたゲートは2時の方向を向く。この場合、ボールは(24)アウトレーンに入っても落ちずに(30)フリッパーに向かって戻される。これは当サイトの図示にあるボールリターンゲートの置き方に等しい。

    他の置き方としてゲートの支点が(24)アウトレーン(31)シューターレーンの間にある機種では、そのゲートは開くと10時の方向を向く。この場合、ボールは(24)アウトレーンに入っても落ちずに(31)シューターレーンに向かって戻される。なお、これと同じ働きをするゲートが(4)プレイフィールドの中段右端に置かれる機種もある。この場合、該当する中段右レーンを通ったボールは開いたゲートによって(31)シューターレーンに戻される。

    ボールリターンゲートはボールの行き先を振り分けることから、(36)ディバーターの一種とも言える。

  • (45)トローフ / trough

    (31)シューターレーンに出る前のボールの通り道または収納場所。

    古い機種には例外もあるが近代以降ほとんどの機種におけるボールの流れは、トローフ ⇒(31)シューターレーン(4)プレイフィールド(32)アウトホール⇒トローフ と循環している。但しマルチボールプレイのある機種ではボールが(4)プレイフィールドの一部分に留まる(ロックされる)ものがある。近年ではトローフに4個から6個のボールを備える機種が多いが、この数は「マルチボールの際に同時に(4)プレイフィールドに出現するボールの最大個数」と言って良い。

    1930年代に始まった初期のピンボールにはボールが5個や10個も備えられており、この数は上述のものとは異なり「1プレイで遊べるボールの回数」に相当する。当時はまだ「落ちたボールはそのプレイの中では再使用されない」仕組みだったので、10個のボールがあればそれを各々全てプレイする。プレイされた各ボールのうち、あるものは横長の(32)アウトホールに並んだ。また(28)キックアウトホールの項で触れたガブルホールやトラップホールに入るボールもあった。それらのボール が、新たにプレイが始まる際のリセットによって(31)シューターレーンへと通じる道筋がある。これが原始のトローフと位置付けられる。なお "trough" は「溝」という意味で、カタカナ表記が違うが「トラフ」(海底等に出来る線状の凹み)と同じである。

    1960年代半ばになると新機構が取り入れられ、「落ちたボールはそのプレイの中で繰り返し再使用される」ようになる。つまりマルチボールのない機種であればボールは1つあれば充分ということになり、1プレイで3ボール遊べる機種では1つの同じボールが3回使われる。プレイを終えたボールは(32)アウトホールに入るとそこで一旦は留まるが、次のボール(または次のゲーム)が始まる際に右側に蹴り出されて(31)シューターレーンに現われる。その通り道の途中に設けられたスイッチが反応するとボール数のカウントが進んで(4)プレイフィールドの状態のリセットなどが起きる。この時代のこの部分の機構においてはボールを蹴り出すためにコイルで作動するキッカーは(32)アウトホールの1つだけで、つまりそこからのひと蹴りでボールは(31)シューターレーンに運ばれる。

    1980年頃のマルチボールのある機種の一例では、(32)アウトホール(31)シューターレーンの間にボールを一時的に留めておくための機構が設けられている。その機構はコイルで作動するので、(32)アウトホールのキッカーのコイル以外にもう1つコイルが設けられたことになる。その機構はボールリリース(release=解放)と名付けられている。(32)アウトホールから右側に蹴られたボールはボールリリース部が保持し、必要に応じて(31)シューターレーンに送り出す。この状態になるとトローフは通り道だけではなく、ボールの収納場所にもなったと言える 。

    他のメーカーの1980年頃のマルチボールのある機種では、紛らわしいことに(32)アウトホールにおいてボールを蹴り出すキッカーのことをボールリリースと称するようになっていた。そのキッカーに蹴られたボールが(31)シューターレーンに向かう経路に上り坂と下り坂を設け、ボールランプ(ramp)と名付けた。(27)ランプレーンの項に示した通り、「高さの異なる位置間をボールが移動する通り道」はランプなのである。ボールランプの山を越えた場所にはボールが留まり、それを検知するためのスイッチは3ボールのマルチボールのある機種ではレフトボールランプ, センターボールランプ, ライトボールランプとされている。ボールランプの下り坂の右端から(31)シューターレーンにボールを送り出す機構にはボールランプスロワー(thrower=投入器)という名が見られる。数年後の機種ではボールランプスロワーの名はボールランプリリースに代わっており、(32)アウトホールのキッカーはそのものの通りに(32)アウトホールという名に戻っている。

    上述のような機構は(12)ボトムアーチに覆われていて見えないのでプレイヤーにとっては特に差を感じられるものではないが、各メーカーで様々な試行錯誤がなされていた。更に他のメーカーの例では同じ1980年頃に(32)アウトホールにレフト, センター, ライトの3つのスイッチを持つ機種がある。ボールはその中で常に右側に転がるようになっており、キッカーはライト(右)の位置にあるボールを蹴り出して(31)シューターレーンに向かわせる。この方式はボールを重力で右側に転がしておいて右端のコイル1つだけでボールを(31)シューターレーンに送り出すという意味では、後述の1990年代のトローフの形式を先取りしていた。

    冒頭で述べたように、近代以降のマルチボールのある機種に仕込まれるボールの個数は「マルチボールの際に出現するボールの最大数」になった(但しプログラミングの都合で2ボールのマルチボールしかない機種でもボールを3つ備えているなどの例外あり)。試行錯誤ののちにある程度落ち着いた形式のトローフでは、それら全てのボールが収納されて各々のボールの所在を確認するためのスイッチが設けられている。1980年代の3ボールのマルチボールプレイのある機種の一例では、トローフの前後を含めて5つのスイッチがある。それらは左側から順に、(32)アウトホールに1つ, トローフに3つ,(31)シューターレーンに1つとなる。ボールは(32)アウトホールで検知されるとキッカーに蹴られてトローフに収められる。そして(31)シューターレーンに向かう場合にはトローフの右端にあるフィーダー(feeder=供給器)がコイルによって作動し、ボールはかき出される。これら5つのスイッチに加えてマルチボールまでの過程では(4)プレイフィールドのどこかにボールがロックされるのでその場所にもスイッチがあり、それら全てについてのオンとオフの認識によってプログラムはプレイの進行状況を把握して制御する。なおこの時期のトローフの傾斜様態は先述のボールランプの形と同じで途中に頂点のある山型である。これは左側にある(32)アウトホールのキッカーに蹴られたボールが坂を登って頂点を越えると下り坂に並んだトローフのスイッチ部に収納されるという形である。また(32)アウトホールから蹴り込まれたボールが元々トローフ内にあったボールと衝突した弾みで山の頂点を再び越えて(32)アウトホールに転がり戻るのを防ぐために、トローフ内には右側一方通行の(40)ワンウエイゲートが設けられている。

    トローフ内のスイッチ(及び上述のロック部のスイッチ)が正しくオンとオフを判定することは、プレイを正常に進行させるためには不可欠である。またそれと同様にその機種を設置した時点で仕込むボールの個数が指定数の通りであることも重要である。指定数より多くても少なくても、トローフのスイッチ反応による状況把握はは本来のプレイ進行の状況にあるべき判定とは異なってしまうので不具合が生じる。仕込むべきボールの指定数は設置時に(3)プレイフィールドグラスをずらしてボールを投入する際に見えるように、(10)モールディングバーを取り外すと(7)キャビネットの前端上部に表示されるようになっていることが多い 。例えば4個ならば "INSTALL 4 BALLS" と示されたラベルが貼り付けられている。(42)キャプティブボールの項で触れた運営側の勘違いによって発生する不具合は、指定数よりも多い個数のボールが仕込まれたことに起因する。

    1990年代前半には(32)アウトホールのスイッチとキッカーをなくし、トローフを右下がりに深く傾ける新しい機構が登場する。こうなると(32)アウトホールというものは見た目の位置の呼び名であって実質は「トローフの入口」に過ぎず、落ちたボールの検知もトローフ内のスイッチが行なっている。例えばボール6個を必要とする機種ではトローフ内に6個のスイッチが並び、最も右端の収納部にはボールを(31)シューターレーンに送り出すフィーダーがある。この方式でのフィーダーは深いところからボールを斜め上方に力強く打ち上げるのだが、蹴り出しに失敗した場合にボールが(31)シューターレーンに出ないでフィーダーに戻ってしまうことがしばしばある。そのボールが戻る直前には既に2番目のボールが右に転がって来てフィーダーの上に乗っている。フィーダーの上の空間にはボール2個以上の高さがあるため、出戻りボールが上に乗って2個が縦に団子状(dango-state)に重なってしまうというトラブルが発生する。このようなボールが詰まった状態を検知するために、トローフ最右端のスイッチの更に上には7つ目のスイッチとしてトローフジャム(jam=混雑)スイッチが備えられている。このスイッチがオンになると、フィーダーは詰まりを解消させるためにボール2個を蹴り上げる。ちなみに似たようなトラブルとして(31)シューターレーンにボールが2個出てしまうことも多々ある訳で、そこにも2個目のスイッチを設ければ不具合を検知出来るのだが。

  • (46)シューターゲージ / shooter gauge

    (17)ボールシューターによってボールを打ち出す際、勢いの強弱の目安に用いる目盛り。

    (30)フリッパー搭載前の時代においては、ボールシューターでの打ち出し加減でプレイの成果が極めて大きく左右されるのがピンボールというゲームだった。近代になっても打ち出したボールの行き先がプレイの展開に重要な影響を与える機種がほとんどで、各ボールの開始時には(19)トップレーンなどの狙い目に向けて緊張感を伴ってボールを打ち出すことが必須だった。シューターゲージはその打ち出し時の強弱を計る為に利用される。またシューターゲージを利用しないでも手先の繊細な感覚で強弱を加減する技術を身に着けるプレイヤーもいた。1990年頃にはルール上での打ち出し時の狙い目についてスキルショット(skill shot)という名称が使われるようになり、その後定着した。

    しかし1990年代には、それまで手動式だった(17)ボールシューターが自動式になる流行に連れて状況が変わって行った。手動式によるスキルショットが重要な機種も少なくなかったのだが、ほぼ技術(スキル)を必要としない自動式の打ち出しに対してもスキルショットというルール名が用いられることには違和感がある。

    近年では手動式の(17)ボールシューターも復権しているが、 慎重にボールを打ち出すようなゲーム性自体は重要視されていない様子である。それでもシューターゲージは名残のような模様になって施されている。